16日、陸上世界選手権2日目で男子100m決勝が行なわれ、北京オリンピック金メダリストのウサイン・ボルト(ジャマイカ)が自身の持つ世界記録を0秒11更新する9秒58のタイムで金メダルを獲得した。2位には前回大阪大会の覇者、タイソン・ゲイ(米国)が9秒71で入り、3位にはアサファ・パウエル(ジャマイカ)が入った。
 ベルリンに衝撃が走った――。今大会のハイライトと言われていた男子100m決勝は、想像を遥かに超える世界新記録が樹立された。準決勝を1位で通過したボルトは4レーンからのスタート。5レーンのライバル・ゲイを横目に、スタートから完璧な走りを見せた。

 ほぼ横一線のスタートから、すぐに他者との差を広げにかかるボルト。190センチを超える身長でダイナミックに走る姿は、全てが規格外だった。

 後半にはゲイも必死に追い上げてきたが、ボルトとの差が縮まることはなかった。北京五輪では余裕の“横走り”でゴールラインを駆け抜けたボルトだが、今回は少し顔を横に向ける程度。ゴールラインを越えて、計時されたタイムは9秒58。北京で初めて9秒6台に突入した男は、1年後に9秒5台に突入してしまった。

 ボルトは「初めて9秒5で走った人間になれて誇りに思うし、うれしい。好スタートが切れて、加速もよかった。50メートルを過ぎてからは自分の強みなので、もう抜かれないと思った。次に世界記録を更新するのが自分になるかは分からないが、自分には何でも可能だと思う」と興奮気味に語った。

 敗れたゲイも自己ベストでの走りに「9秒71の自己ベストを出せた。不満はない。ボルトが良いレースをした。自分もベストを尽くしたが、十分でなかった。200mを楽しみにしている」と口にし、200mでの雪辱を誓った。

 ボルトとゲイの第2ラウンドは4日後の200mだ。しかし、この距離はもともとボルトが得意としている距離だけに、2冠制覇は濃厚か。22日に行なわれる4×100リレーも含めた3冠制覇にボルトが大きく近付く100m決勝だった。

 なお、同日には100m準決勝が行われ、日本人で唯一残っていた塚原直貴(富士通)が2組に登場。日本記録更新が期待された塚原だったが、後半に伸びを欠き10秒25でゴール。準決勝進出者16名中再下位の記録で100mのレースを終えた。

「無欲でいくつもりだったが、どこか気負いがあったのかもしれない。北京五輪より世界のレベルは確実に上がっている。決勝進出にはまだ壁がある」と塚原。21、22日に行なわれる4×100リレーで決勝進出とメダル獲得を目標にリベンジを果たしたい。

【男子100m】
決勝
1位 ウサイン・ボルト(ジャマイカ) 9秒58(世界新記録)
2位 タイソン・ゲイ(米国) 9秒71
3位 アサファ・パウエル(ジャマイカ) 9秒84

準決勝
第2組 8位 塚原直貴 10秒25