3日、東レ・パンパシフィック・オープン決勝が東京・有明コロシアムで行われた。ダブルスでは今大会限りでの現役引退を表明している杉山愛、ダニエラ・ハンチュコバ(スロバキア)組がフランチェスカ・スキアボーネ(イタリア)、アリサ・クレイバノバ組にストレートで敗れ、準優勝に終わった。シングルスは試合中に右手首を痛めたエレナ・ヤンコビッチ(セルビア)が第2セットの途中で棄権し、マリア・シャラポワ(ロシア)の4年ぶり2度目の優勝となった。
(写真:「感謝の気持ちでいっぱい」と笑顔で語る杉山愛)
 ダブルスでは日本人選手として大会史上初となる決勝に臨んだ杉山愛。その姿をひと目見ようと、会場には過去最多の9513人ものファンが詰め掛けた。プロ17年間の集大成となったこの試合、第1セットは3ゲームを連取し、最高のスタートを切った。ところが4−2からの第6ゲーム、この試合初めてブレイクされると、そこからスキアボーネとクレイバノバが勢いづき、一気に逆転。結局、杉山、ハンチュコバ組は1ゲームも奪うことができないまま、このセットを4−6で落とした。

 第2セットも杉山、ハンチュコバ組はリズムを取り戻せなかった。第1ゲーム、いきなり相手にブレイクを許すと、第2ゲームはクレイバノバのパワーに押され、ラブゲームで落とした。ようやく第5ゲーム、ハンチュコバのサービスゲームをキープして、このセット初めてゲームを奪った。続く第6ゲームもデュースまで持ち込むも、ブレイクすることはできず、セットカウント1−5と後がなくなる。

 だが、杉山が最後の粘りを見せた。プレッシャーのかかる第7ゲーム、サーブで攻め、ラブゲームでキープ。観客からはひときわ大きな歓声と拍手が送られた。しかし、第8ゲーム、杉山、ハンチュコバともに痛恨のミスを出し、1ポイントも奪えないまま相手のマッチポイントを迎えた。最後は杉山のリターンをクレイバノバがボレー。杉山とハンチュコバはその打球が自分たちの間を通り過ぎるのを見ることしかできなかった。

「優勝することはできなかったが、今はとても満たされている気持ち。これ以上はないというくらい、本当にいいかたちで現役生活を終えることができた。寂しいというよりは、やり切ったと感じている」
 試合後、杉山に悲壮感や悔しさは全く見られず、その満面の笑顔からは達成感があふれ出ていた。先月28日のシングルスでは体調を崩し、途中棄権という悔しい思いをした杉山。その後も決して本調子ではなかった。しかし、それでもファイナルまで這い上がってきた。どんな時も全力で戦う、そのファイティングスピリッツは最後まで健在だった。

「私にとってテニスは戦いというよりもチャレンジだった。少しでもうまくなりたい、という気持ちがあったからこそ、ここまで長く現役を続けてこられたのだと思う。テニスは総合力が求められるスポーツで技術だけあっても勝つことはできない。心技体、全てが必要。だから、結果が出なくなると、いつも自分に何が足りないのかを考えた。そうすることで、どうしたら今を乗り越えられるのか、その答えを見つける力をテニスで得ることができたと思う」

 17年間の現役生活にピリオドを打った杉山。ファンの温かい拍手に送られ、“愛ちゃんスマイル”でコートを後にした。