ボクシングのダブル世界タイトルマッチが代々木競技場第2体育館で行われ、WBC世界スーパーバンタム級王者の西岡利晃(帝拳)は同級5位のイバン・エルナンデス(メキシコ)を3R終了TKOで破り、3度目の防衛に成功した。西岡は日本人として24年ぶりに海外防衛を果たした5月のジョニー・ゴンザレス戦(メキシコ)に続き、日本人史上4人目の3連続KO防衛。WBA世界スーパーフェザー級王者のホルヘ・リナレス(帝拳)は同級6位のファン・カルロス・サルガド(メキシコ)に1R1分13秒でTKO負けを喫し、防衛に失敗した。
「1戦1戦強くなること、勝つことしか考えていない」
 そう語る西岡が更なる進化をリングでみせた。今回の挑戦者、エルナンデスは元WBO世界スーパーフライ級王者。前回の防衛戦に続き、メキシコの強敵を相手に迎えた。

 1Rから前傾姿勢で攻めてくる挑戦者に対し、西岡はカウンターでボディを決め、冷静に対処する。動き回りながら、多彩なパンチを繰り出すエルナンデスだが、チャンピオンは出てきたところを左ストレート、ボディで返し、打ち合いにもひるまない。

 そして前回も勝敗を決した3R、相手の右フックをしっかりとかわし、すかさず左のフック。「一発あごに入った感触はあった」。ダメージを負ったエルナンデスはジリジリと下がり、手が出なくなる。この一戦に向けて右パンチを磨いた成果は見せるまでもなかった。ラウンド終了後、挑戦者陣営はエルナンデスが下あごを骨折した疑いがあると判断。試合を放棄し、西岡の勝利が決まった。

「すっきりしない内容で、満足してもらえなかったかもしれない。申し訳ない」
 王者は試合後、勝利の喜びを語るどころかファンに謝罪した。それは目指す場所が高い証拠でもある。「(ラファエル・)マルケスなり、ファンマ・ロペスでも、(セレスティーノ・)カバジェロでも誰でもいい。ビッグファイトに挑戦します」。リング上では早くも新たな目標をファンに宣言した。ラスベガス進出も視野に入れる33歳は、着実に強さを増している。

 一方、ここまで27戦全勝、2階級制覇と無敵を誇ってきたリナレスがあっけなく崩れた。
 ベネズエラ出身ながら日本を拠点としてトレーニングしてきたチャンピオンにとって、2年8カ月ぶりの“凱旋試合”。9月には史上初の6階級制覇を果たした元王者のオスカー・デラホーヤとプロモーター契約を結び、米国進出へ弾みをつける一戦となるはずだった。

 ところが試合はわずかワンパンチで決まる。立ち上がり、ジャブを繰り出して様子を見ていたリナレスに対し、挑戦者は踏み込みよく左のフックを浴びせる。これが王者のガードを打ち破り、テンプルを直撃。WBC世界フェザー級時代から世界戦で4連続KOをみせていたリナレスがあおむけになって倒れた。

 チャンピオンは何とか立ち上がったものの、足元はおぼつかず、目の焦点は定まらない。一気にラッシュをかける挑戦者の連打によろよろと腰から落ち、レフェリーが試合を止めた。「一発で倒せるとは思っていなかった」。勝ったサルガドですら信じられないといった面持ちで、会場に詰め掛けたファンも静まり返った。