前半戦が終わって首位・横浜DeNAとの差は2ゲーム。カープには、まだまだ優勝の可能性がある。いや、カープだけじゃなく、どの球団にもチャンスは残されている。

 セ・リーグの状況を一言でいえば“0強6弱”である。史上最低の4割1分9厘という勝率で終わったパ・リーグとの交流戦が、混戦に拍車をかけた。

 しかし、カープにとってはそれが幸いした。交流戦を5割で乗り切ったことで、首位との差が縮まったのだから。

 さて、カープが史上稀に見る混戦を制するには何が必要か。私は指揮官、すなわち緒方孝市の決断力だと見る。

 正直いって、ここまでの指揮官の采配には不満が残る。1点差ゲームで6つも負け越しているのは、その証左である。

 たとえばクローザーの中崎翔太をどう使うのか。「オマエに任せた」というのなら、僅差でリードのゲームには必ず投入すべきである。責任を与えなければ、人は育たない。

 いや、そこまでの信頼はないというのであれば、点をとられる確率の高いイニングまたぎには賛成しかねる。要するに使い方が中途半端なのだ。

 6月にセットアッパーに配置転換した大瀬良大地もそうだが、オマエのここに期待している、こういう使い方をする、こういう起用はしない、という確固たる方針があまり感じられない。

 カープで長くマスクを被った西山秀二は、自らの胸を叩いて「優勝する時って、選手のここが、みんな熱くなっているでしょう」と語っていた。「この監督を男にしたい」と選手が自然に思うような采配がどれだけ見られるか。

 中には「一年目の監督に多くを求めるべきではない」との声もあるが、今年勝負しなくて、いつするのか。監督の成長を待つ余裕は、カープにはない。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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