天国と地獄は紙一重である。昨季、オリックスはリーグトップの80勝をあげ、最後まで福岡ソフトバンクと優勝を争った。その手腕が認められ、監督の森脇浩司は球団と今季から新たに2年契約を結んだ。その森脇が、6月の声を聞くと同時に、成績不振を理由に「休養」を申し出た。まさかの事態である。

 大震災から20年目の今年、オリックスは「総額42億円補強」で勝負に出た。埼玉西武の元主砲で米国でプレーしていた中島裕之、2010年の打点王・小谷野栄一(前北海道日本ハム)を相次いで獲得し、新外国人もトニ・ブランコ(前横浜DeNA)、ブライアン・バリントン(前広島)と実績のあるところを揃えた。国内FA権を行使したエース金子千尋の引き止めにも成功した。開幕前には多くの評論家がオリックスを優勝候補にあげた。

 しかし、戦力の充実と反比例するように成績は落ち込み、6月3日現在、19勝36敗1分でリーグ最下位。首位北海道日本ハムには14ゲームもの大差を付けられている。

 休養を発表する記者会見の席で、森脇は「手遅れになるのが一番よくない。私が身を引くことが一番いい方法だと」と、あくまでも自らの意思による休養であることを強調した。

 休養とはいっても、事実上の辞任であることは言を俟たない。もしかすると親会社から無言の圧力がかかっていたのかもしれない。

 ただし、不振に喘ぐチームが反転攻勢に打って出る上で「監督交代」が有力なカードの一枚であることは間違いない。ショック療法でも、やらないよりはやった方がましだ。

 開幕前、高い評価を得ながら期待を裏切っているという点ではカープも同じだ。オリックスを「他山の石」とすべきである。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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