前東北楽天監督の星野仙一をして「日本一の投手コーチ」と言わしめた福岡ソフトバンクの投手コーチ佐藤義則が昨秋のキャンプで、投手陣に出した注文はシンプルである。

「変化球、特にカーブとスライダーは、いつでもストライクを投げられる練習をしといてくれ」
 佐藤によれば、カウントを悪くした時、変化球でストライクがとれれば、その後のピッチングが楽になるというのである。

「いい例が広島のマエケン(前田健太)。アイツはスライダーなら、いつでもストライクが取れる自信があるんだろうね。だから2ボールナッシングのカウントになっても、少しも慌てない。彼が勝てる理由は、そこにあるんだよ」

 言われてみると、そのとおりだが、では、なぜベンチは「2ボールナッシングのカウントからはスライダーを待て」との指示を出さないのか。

 苦笑いを浮かべながら佐藤は答えた。「これがバッターのわからないところ。いくらこっちがそうアドバイスをしても、ストレートを待つんだ。マエケンは、その裏をかいて涼しい顔でスライダーを投げてくる。だから、悪いカウントから変化球でストライクをとれるピッチャーは強いんです」

 キャンプは変化球でストライクを取る練習を集中的に行う。カープのブルペンでも実践してみてはどうか。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

◎バックナンバーはこちらから