近年、メジャーリーグに移籍し、年月を経て日本球界へ復帰した選手は数多い。この国際化の時代に、当然といえば当然の傾向だろう。基本的には、けっこうなことだと思う。

 ただ、日本球界からメジャーへ行く場合は、通常、一流あるいは超一流選手に限られる。彼らが日本に復帰したとき、すでに渡米する頃の輝きを失っているケースもままある。この現実を、私は、選手が「メジャーリーグに消費されている」と表現してきた。

 このたび、カープ復帰が決まった黒田博樹がすばらしいのは、彼の力はけっして「消費」され尽くしたわけではなく、まだまだ全盛期にある、ということだ。おそらく今季、メジャーに残っていても、先発ローテションに入って2ケタ勝つことができただろう。

 あらためて、新年、黒田、おめでとうございます。いまや、これがカープファンの挨拶の定番である。

 というわけで、常識的に考えれば、黒田は今季、10勝以上してくれるにちがいない。刺激を受けた前田健太も“現エース”の意地を見せるだろうから15勝以上。黒田と2人で30勝。大瀬良大地も10勝で早くも40勝。優勝以外にありえない――というのも、また、現在のカープファンの日常的な会話ですね。

 野手のほうに目を向ければ、菊池涼介、丸佳浩の“キクマルコンビ”は健在だ。ドラフト1位の野間峻祥も評判がいいし、万々歳ではないか。

 もちろん、おめでたい話に水を差すつもりはない。だが、たとえば4番は誰が打つのだろう。ブラッド・エルドレッドが第一候補にちがいない。

 たしかに、去年の前半戦のエルドレッドであれば、何の問題もない。しかし、後半戦のエルドレッドでは、ちょっと困るのではないか。かんじんなときに、4番で打線がとぎれてしまう。ただ、ホームランの魔力にとりつかれてしまったように見えた後半戦のエルドレッドが、そう簡単に前半戦の姿に戻れるとはかぎらないだろう。

 かといって、松山竜平では荷が重いような気がする。新井貴浩や栗原健太の大復活を夢見るのは、ファンの特権ではあるが、現時点で現実的ではない。丸は3番ならいいが、4番はタイプが違うだろう。

 ヘスス・グスマンという新外国人選手を獲得したそうだが、こればっかりは公式戦になってみないと、わからない。

 つまり、エルドレッド以外の4番候補はライネル・ロサリオしかいないと思うのだ。

 外野手としては、昨年、守備に少し不安な面を見せたこともあるので、緒方孝市新監督がどう評価するか、わからない。しかし、打率と長打力の両方を兼ね備えた潜在能力はロサリオが一番ではないだろうか。

 エルドレッドは、果たして昨年前半の絶頂期に戻れるのか。もし、うまくいかなかった場合、「4番ロサリオ」を球団として育てられるのか。そのあたりにもペナントレースのカギがあると思われる。

(今月は二宮清純が第2、4週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第3週木曜を担当します)
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