いまさら、そんな古い話を、と思われるかもしれないが、今シーズンのカープの失敗の原因を考えてみる(今季の他球団との力関係から考えて、3位という結果は、やはり失敗というべきだろう)。

 まずは、なぜ2位を死守できず、阪神に逆転されて3位になってしまったのか。ご承知のように、あと1勝足りなかった。

 あとひとつという言葉で印象に残るのが、9月27日の中日戦。先発・前田健太が、なんとか持ちこたえて8回2失点。3-2と1点リードで9回表、クローザーとして登板したキャム・ミコライオが大乱調。逆転され、一度は同点に追いついたが、延長の末、敗戦。問題は、エースで必勝を期したのに、クローザーが1点を守れなかったことにある。
 
 もうひとつは、クライマックスシリーズファーストステージで、なぜ1敗1分で敗退したのか。とくに、2試合続けて無得点というのは問題だろう。
 
 原因は菊池涼介、丸佳浩の不振にある。2人合わせて2試合で18打数1安打。安打は菊池の1本だけだった。

 今年の躍進を支えたひとつの要因である「キクマル」コンビの不振は、なぜ起きたか。単なる私見に過ぎないが、打順だと思う。

 シーズン中は基本的に2番・菊池、3番・丸だった。それを攻撃的にするため、3番にライネル・ロサリオを入れて、1番・菊池、2番・丸に変えたのである。攻撃的に、という意図はわかるが、いつもの打順でないことが、微妙に影響したのではあるまいか。

 この2つのポイントから、来季を考える。まず、ミコライオとの契約更新をせず、新外国人投手を獲得したこと。これは、正解だと思う。

 ミコライオはかんじんなところで、痛い負けを喫する面があった。とくに1点リードで9回に登板するケースでは、先頭打者を出すと、一気に崩れる可能性が出てきてしまう。それも、往々にして、外角低めのいいコースに行ったストレートをボールと判定されて、みずから精神的に追い込まれるパターンが目立った。

 もちろん、実績のあるクローザーに変わりはないが、やはり、来季もこのリスクを背負ってシーズンを過ごすのは、得策ではあるまい。とはいえ、現時点で、来季、誰がクローザーをやるのかはわからない。クローザー不在の事態に陥る可能性もないわけではないが、しかし、思い切って、クローザーを変えたことは評価したい。新しい可能性が芽ばえて楽しみである。

 もう1点は、緒方孝市新監督の課題だろう。

 どのようなタイプの監督になるのか、これまた現時点ではわからない。ただ、少なくとも、打順に関して、一定の方針があったほうがいい。

 もちろん、打者の好不調や故障もあるし、打順をまったく固定することなど不可能だ。むしろ、ある程度は打順も変動したほうが、新鮮味があっていいと、個人的には思う。

 しかし、打順の根幹となる部分を変えてはいけないのではあるまいか。そこは、野手総合コーチであった今季、緒方新監督はどのように考えていたのだろうか。野村謙二郎前監督は今季、あまりにも頻繁に打順をいじりすぎた。明らかに新監督の修正すべきポイントである。

 ところで、今季のカープのドラフト指名は究極の“穴狙い”だった。1位は野間峻祥(中部学院大)。投手ではなく、俊足強打の外野手である。おそらく、外野手出身の新監督でなければ、ありえない指名だろう。それは、それでいいと思う。

 個人的には3位の塹江敦哉に注目したい。高松北高の左腕投手である。

 塹江は、まだまだ未完成の投手だ。成長して一流投手になれるか、2軍のままで終わるか、誰にもわからない。高卒の投手が誰でも前田健太みたいに、うまく育つわけではない。

 しかし、もし、うまくプロの水が合って成長できたら、左腕から素晴らしいストレートを投げる投手になる可能性は秘めていると思う。多少なりとも“穴狙い”の期待かもしれないが、彼のダイナミックな腕の振りは、魅力である。

 ともあれ、緒方新監督がどのような思想のもとに采配を振るうのか、注視したい。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)
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