今季の年俸2億円から65%減の7000万円を提示された阪神の新井貴浩が自由契約となる意思を球団に伝え、了承された。これを受け、カープ・松田元オーナーは「広島で生まれ育った選手。彼にカープで野球がやりたいという気持ちがあるのなら、ウチとしては歓迎だ」と受け入れ容認とも思える発言をした。

 ファンの中にはFA権を行使してカープを出て行った新井に複雑な思いを抱いている者が少なくない。「後ろ足で砂をかけるようにして出て行った新井を応援する気にならない」と口にする者までいる。

 そうした感情はわからないでもない。しかし、プロは契約社会。自由契約となった選手に球団が興味を示すのは有り得る話である。

 問題は新井の加入がチームにプラスになるか、どうかだ。カープにはファーストを守れる選手がたくさんいる。まだ発展途上だが、堂林翔太、鈴木誠也ら将来性のある右バッターも育ってきた。

 新井が戻ってくれば、誰かが割をくうことになる。今季、2割4分4厘、3本塁打、31打点のバッターに、どれだけ余力が残っているのか。そこは見極めて欲しい。

 新井は通算2000本安打に、あと146本と迫っている。応援したい気持ちは山々だが、記録のために若い選手が犠牲になるような事態は避けたい。

 何より聞きたいのは、新監督の緒方孝市が新井の獲得を望んでいるのかどうか。そこを無視すべきではない。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)
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