9月17日現在、巨人はマジック8だ。2日からの広島3連戦、9日からの阪神3連戦に全勝したのが大きかった。ここぞという試合での勝負強さ、それが広島や阪神との差なのだろう。

 こうした巨人の戦いぶりを予想していたのが阪神GM付育成&打撃コーディネーターの掛布雅之である。掛布に会ったのは8月4日で、この時点では2位・阪神に2.5ゲーム、3位・広島に3.5ゲーム差と混戦模様だった。

「7月いっぱいまでは2、3年先を見据えた野球をやっていた」と掛布は言い、続けた。
「2、3年先の巨人は坂本勇人と長野久義を軸に戦わなければいけない。それを試していたと思うんです。つまり阿部慎之助ひとりに頼らない野球を模索していた。

 しかし、勝負どころになれば、もちろんそんなことはいってられない。阿部を4番に戻し、本来の野球をやるでしょう。もちろん阿部もそれをわかっていて、打率では勝負しない。勝負に結びつく質のいい1本のヒット、1本のホームランを追求すると思いますね」

 概ね、掛布の予想どおりの展開になった。競馬にたとえれば第4コーナーまでは馬なりで走り、第4コーナーを回ってからムチを入れたということだろうか。広島と阪神は、はるか後景に退いてしまった。

 しかし、まだ勝負が終わったわけではない。短期決戦では何が起こるかわからない。広島にすれば、まずは2位の座をしっかり確保し、ネジを巻いてCSに臨みたいところだ。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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