巨人の左のセットアッパー山口鉄也と言えば、文字通り“鉄人”である。2008年以降、6年連続で60試合以上に登板している。

 しかも防御率が素晴らしい。3点台は10年の3.05だけで、後は0点台が1回、1点台が3回、2点台が1回。過去に3度、最優秀中継ぎ投手のタイトルに輝いている。

 今季の調子はイマイチだが、それでもルーキーが打つのは至難だろうと思って見ていた。8月1日、東京ドームでの巨人戦だ。8回表、無死ランナーなしの場面で打席に入った田中広輔は山口から右中間へ二塁打を放った。

 指揮官の野村謙二郎は左投手にはハンで押したように右の代打を出してくる。しかし、このヒットを見て考え方が変わったようだ。「投手の左右に関わらず広輔を使う」と明言した。

 19日現在、田中の打率は3割1分1厘だが、右ピッチャーに対しては2割8分3厘であるのに対し、左ピッチャーには4割5分2厘と打ちまくっている。普通、ルーキーの左バッターは左ピッチャーが相手だと体が開くものだが、それが全くない。好調は一時的な現象ではなさそうだ。

 彼がショートに定着すれば菊地涼介との二遊間は、向こう5年は安泰だろう。育て甲斐のあるルーキーだと思う。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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