6月を首位で迎えたのは、16年ぶりである。5日現在、31勝23敗で2位・巨人に1.5ゲーム差をつけている。

 苦手な交流戦前、「5割で乗り切れれば……」と考えていたが、5日時点では4つ負け越して、12球団中最下位だ。ここから、どれだけ巻き返せるか。

 いずれにしても「追われる経験」のない選手たちにとって、本当の正念場はここからだ。

 しかし、現場の声を拾うと、追われるプレッシャーを感じている選手は、意外なほど少ない。ある主力選手は「9月で首位だったら、ちょっとはびびるかもしれないけど、まだ6月ですからね」とサラッと語っていた。

 交流戦で失速気味のカープだが、バタバタすることはない。「ここまでがうまく行きすぎた」と割りきればいいのだ。

 生え抜きで優勝経験のある選手は、ひとりもいない。それを懸念する向きもあるが、「怖いもの知らずほど怖いものはない」という言葉もあるように、「追われる苦しみ」を知らないのは、逆に言えばアドバンテージかもしれない。

 余談だが、バルセロナ五輪の競泳女子200メートル平泳ぎで金メダルを胸に飾った岩崎恭子は、あの時、14歳だった。「怖いもの知らず」が幸いしたのである。カープも、そうなればいいのだが……。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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