交流戦の初戦、20日に行なわれたヤフオクドームでの福岡ソフトバンク戦で珍しい出来事があった。4点を追う8回表、2死二塁の場面でキラ・カアイフエが放った打球はセンター後方へ。一塁塁審の山路哲生が手を回し、キラはダイヤモンド一周した。この時点では2ランホームランだ。

 ところが、その直後、審判団が集まり試合は中断。ビデオ判定の結果、打球はフェンス上部に当たったと見なされ、一転、エンタイトル2ベースとなった。得点は「1」に変更された。“幻のホームラン”というわけである。

 ここまでは、これまでにも何度かあったケースだが、珍しかったのはビデオ判定に10分もの時間を要したことだ。その間、2度、森健次郎塁審の「念を入れて検証しております」というアナウンスが流れた。

 ビデオ判定が導入されたのは2010年のシーズンからで、メジャーリーグにならったものだ。判定の正確性を増し、審判の負担を軽減するためにも、いい措置だった。しかし、ゲームが熱を帯びてきた場面での10分間もの中断は興ざめ以外の何物でもなかった。

 たとえば、である。今回のように映像を見ても判定が難しかった場合、5分を超えれば「最初のジャッジに従う」というルールを新たに設けてもいいのではないか。日本人は几帳面だから、一度、チェックに熱が入ると時間を忘れても白黒つけたがる傾向にある。それ自体、悪いことではないのだが、野球の基本はエンターテインメントであって、裁判ではない。もっとビデオ判定を弾力的に使いこなしてもいいのではないか。そんな思いがぬぐえなかった。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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