香港にきて2カ月ちょっと、公式戦7試合目にして、ようやく勝利を味わうことができました。クラブにとっても実に5カ月ぶりの白星です。

 しかも勝った相手は首位を走るサウスチャイナ。若い選手が多いチームにとって、これは大きな自信になります。

 サウスチャイナ戦は3月30日に行われる予定でしたが、雷雨のため、前半30分あたりで中止になりました。再試合は5日後の4月4日。週末でお客さんがたくさん入っていただけに中止は残念だったものの、個人的には相手の特徴がつかめたことがプラスに働きました。

 前回も紹介したように、香港はこのところ、ずっと曇りや雨のジメジメした日が続いています。再試合の日も小雨が降り、ピッチには水たまりがあちこちにできていました。

 試合は立ち上がりから動きました。13分、相手DFの裏に出たボールが水たまりで止まり、それが吉武剛の足元に収まります。慌ててゴールキーパーが飛び出したところを冷静に決め、先制点をあげました。

 その後もスリッピーなコンディションでパスがなかなかつなげない中、僕たちはしっかり守りを固め、90分間を戦い抜きました。サウスチャイナにしてみれば、僕たちは格下。「勝たなきゃいけない」という焦りも出ていたのではないでしょうか。

 この試合、僕にとっては追加点をあげる大きなチャンスがありました。味方のFKに頭で合わせたシーンです。しかし、ボールは無情にもポストを直撃……。香港に来てから惜しいシーンは何度もあるのですが、あとちょっとの部分で決めきれません。

 今回対戦したサウスチャイナには日本人選手がいました。15歳のMF地下(じげ)浩多。といっても日本ではなじみが薄いかもしれません。彼は香港生まれの香港育ちで、日本でのプレー経験はないからです。

 ただ、15歳でプロになっていることからも分かるように、テクニックはいいものを持っています。香港に来て何度か話をしましたが、謙虚にサッカーに取り組んでいる姿勢は伝わってきました。

 もちろん、香港からステップアップして、より大きなフィールドで活躍するには、フィジカル面をもっと鍛える必要があります。サッカーで何が何でも生きていくという“覚悟”も求められるでしょう。まだ若いだけに、いろいろ誘惑も多いと思いますが、ぜひ日本でも名前を知られるような存在になってほしいものです。

 元英国領の香港では、サッカーもイングランドのプレミアリーグとのつながりがみられます。たとえば娘たちが通っているサッカースクールはチェルシーが立ち上げたもの。専用のグラウンドで、英国でコーチ修行した日本人も指導にあたっています。
(写真:チェルシーのサッカースクール。横浜FC香港とも提携している)

 言うまでもなく指導カリキュラムはチェルシーの下部組織で実践されている内容です。娘たちのクラスでは楽しくボールを蹴ることに主眼を置いていますが、もう少しレベルが高くなると足の使い方ひとつから細かく教えています。こういう部分にもきちんとお金をかけられるのは、さすがビッグクラブです。

 街中ではマンチェスター・ユナイテッドのユニホームを着た子どもたちを見かけますし、実際にこの夏には親善試合で香港に来ることも決まっています。こういったプレミアリーグの海外戦略は、日本のJリーグがまだまだかなわない部分でしょう。

 シーズン途中からの加入だったこともあり、早くもリーグ戦は残すところ3試合。せっかくの勝利を意味あるものにするには、次の試合が重要です。ここで、いかに結果を残すかが、クラブにとっても僕自身にとっても大事になると感じています。

 個人的には、とにかく1点でも2点でもゴールをあげること。クラブとしては、あと3試合を全勝すること。この2つを目標に、1日1日を過ごしていくつもりです。

 幸い、残りはすべてホームゲームになります。練習でも使い、慣れたスタジアムで、どんな形でもいいから得点を決めたいです。次回こそ、その報告ができるよう100%の準備をして試合に臨みたいと思っています。

(この連載は毎月第2、4木曜更新です)
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