7年目を迎えたBCリーグが、13日いよいよ開幕する。昨季、圧倒的な力で初のリーグ優勝を達成し、その余勢を駆って独立リーグの頂点に立った新潟アルビレックスBCは、主力選手のほとんどが残り、内藤尚行新監督の下、連覇を狙う。それをどの球団が阻むのかが、今季の最大の注目どころだ。
上信越地区
 内藤新監督の采配に注目!

 前期は21勝13敗2分、勝率6割1分8厘。後期は29勝7敗、勝率8割6厘。昨季の新潟の成績だ。圧巻だったのは、後期の北陸地区との対戦成績である。福井ミラクルエレファンツ、富山サンダーバーズ、石川ミリオンスターズに対し、新潟はひとつも落とすことなく、3球団に18連勝を果たしたのだ。

 シーズンを通してのチーム成績からも、その強さは一目瞭然だった。打率2割8分5厘、705安打、408得点、379打点は全てリーグトップ。とはいえ、本塁打19本は福井(10本)、石川(12本)に続いて少ないことからもわかるように、決して大味な野球ではなかった。それでも2位の信濃グランセローズとは88点もの大差をつけるほどの得点を稼ぐことができたのは、各選手が自らの役割をきっちりと果たしたからにほかならない。リーグ最多の280四球、31犠飛という数字が、それを証明している。

 一方、投手陣も安定していた。防御率2.84は福井(2.56)に次いでリーグ2位だが、その福井や石川は、少ない投手への負担が多かったことに比べて、新潟は先発、中継ぎ、抑えと駒が揃っていた。完投数が福井(15)、石川(16)に対し、新潟は7。勝利の方程式がしかれていたことの証だ。

 その主力として日本一に大きく貢献したのは、打者ではチームトップの打率3割3分5厘をマーク、さらには盗塁王を獲得した野呂大樹(堀越高−平成国際大)、野呂に次ぐ打率3割3分の稲葉大樹(安田学園高−城西大−横浜ベイブルース)、打点王に輝いた平野進也(東福岡高−武蔵大)、主砲を務めた福岡良州(流通経済大学付属柏高−流通経済大)。そして投手では先発は最多勝利の14勝をマークした寺田哲也(作新学院高−作新学院大)、その寺田に次ぐ13勝を挙げた阿部拳斗(中越高−新潟証券)、リリーフでは中継ぎ、抑えとフル回転した間曽晃平(横浜商業高−神奈川大)、そしてシーズン途中から守護神となったロバート(八王子実践高−亜細亜大−ロサンゼルス・ドジャース<マイナー>)。これら主力選手がほぼ全員残っているだけに、今季の新潟を優勝候補とする見方は少なくない。

 今季、その新潟を率いるのは、内藤新監督だ。これまで橋上秀樹(現巨人戦略コーチ)、高津臣吾(現新潟シニアアドバイザー)と継承されてきた強さを、内藤監督がどう進化させていくのか。橋上、高津と同じ時代をヤクルトで過ごし、“野村野球”の申し子の一人だけに、内藤が目指す野球を選手が理解することは、そう難しいことではないはずだ。しかし、懸念されるのは、BCリーグに初めてかかわることに加え、指導者経験もないということだ。ヤクルト、楽天でコーチ経験を積んでいた橋上、そして指導者経験はないものの投手としてBCリーグを経験していた高津とは、その点では異なる。「監督は代わっても、実際にプレーするのは選手」とは言うものの、指揮官の采配が勝敗に大きくかかわる競技なだけに、新監督と経験豊富な選手たちがどう融合するかが注目だ。

 カラバイヨ、井野口復帰の群馬、打線に厚み

 この新潟と開幕2連戦を戦うのが、群馬ダイヤモンドペガサスだ。昨季は新人選手が20人と、ほとんどが新メンバーだったこともあり、これまでにない苦戦を強いられた。今季はその巻き返しを図る。就任2年目となる五十嵐章人監督によれば、チームの仕上がり具合は順調のようだ。実際、オープン戦の結果を見ても、3勝2敗とまずまずといったところだろう。

 注目したいのは、その内容だ。2敗はどちらもロースコアでの1点差であり、3勝は9点、7点、12点といずれも大量得点を奪っている。五十嵐監督が打線のポイントと語る、4番・大松陽平(日南学園高−横浜商科大−香川オリーブガイナーズ−三重スリーアローズ)の前後、3番、5番に当たりが出ていることが大きい。

 その打線には大きな戦力が2人、カムバックした。2010年、シーズン途中でオリックスに移籍したにもかかわらず、そのシーズンの本塁打王に輝いたフランシスコ・カラバイヨ。そして、11年シーズンまでチームの主力として活躍した井野口祐介(桐生市立商業高−平成国際大−富山−群馬−米国独立リーグ)だ。特にカラバイヨはオープン戦最終戦となった8日には3ランを2本放つなど、既に本領を発揮している。シーズンでも大暴れしそうな気配だ。

 6球団で唯一、優勝のない信濃グランセローズは「今季こそ」の思いはどこよりも強い。その思いを託されたのは、新監督に就任した岡本哲司だ。岡本は現役を引退した翌年の1997年から10年間にわたって、日本ハムで指導をしている。現在では毎年のようにAクラス入りするほどの強さをもつ日本ハム。その基盤づくりに寄与したひとりだ。その手腕に期待したい。

 ホームで迎える富山との開幕戦では、昨季、先発の柱のひとりとして23試合に登板し、チームトップタイの8勝(8敗)を挙げた4年目の杉山慎(市立船橋高−日本大−全足利クラブ)が先発投手を務める予定だ。昨季も開幕投手を務めた杉山は、6回2/3を投げて9安打5失点。杉山自身は負け投手にはならなかったものの、チームは黒星スタート。その後、引き分けをはさんで6連敗を喫し、大きく後れをとった。今回はそのリベンジとしたいところだ。

 ここ数年は毎年のように「戦力は揃っている」と優勝候補に挙げられながら、なかなか結果を挙げることができなかった信濃。今季こそは、新潟、群馬に割って入り、初の栄冠を獲得できるか。ファンはその瞬間を首を長くして待っている。

北陸地区
 石川、元メジャーリーガーの加入で戦力アップ

 昨季は地区チャンピオンシップで福井に敗れ、今季2年ぶりの王座奪還を狙っているのが、石川だ。2007年のリーグ創設以来、3度リーグ優勝し、11年にはBCリーグ初となる独立リーグチャンピオンとなった実績をもつ石川。投手を中心に“守り勝つ野球”を復活させられるかがポイントとなる。

 その石川に今季、新加入したのが木田優夫だ。日大明誠高からドラフト1位で巨人に入団し、4年目には12勝を挙げて、最多奪三振をマーク。その後、日米の球団で活躍したが、昨季は1軍での登板はわずか1試合に終わり、北海道日本ハムから戦力外通告を受けた。しかし、木田は本気でNPBやメジャー復帰を狙っており、44歳にして野球への情熱や向上心は未だ少しも衰えていない。戦力としての期待もさることながら、26年間のプロ生活で培った経験は、石川の選手たちに大きな影響を及ぼすことは想像に難くない。投手王国再建のカギを握りそうだ。

 そして、打線の要として期待されているのが、今月5日に契約したばかりのクリス・カーターだ。メジャー3年目のニューヨーク・メッツでは、100試合に出場し、打率2割6分3厘、4本塁打をマークしている。球団トライアウトでは柵越えを連発する豪快なバッティングを披露した。埼玉西武に所属した昨季手術したヒザに不安は抱えているものの、DHでの出場なら問題はないと見られている。一度は引退し、「トレーニング不足」としながらも、6日に行なわれた信濃とのオープン戦では早速、本塁打を放っている。カーターの加入で相手投手にとっては、手強い打線となりそうだ。

 福井、待たれるエースの台頭

 昨季、リーグチャンピオンシップで新潟に完敗し、初優勝を逃した福井は、昨年のドラフトでオリックスに5位指名されたエース森本将太の穴を埋める投手の台頭が、最も気になるところだ。候補には、1年目の11年に先発の柱のひとりとして後期だけで7勝(8敗)を挙げた3年目の川端元晴(鯖江高−福井工業大)、昨季の前期にはセットアッパー、そして先発転向後にはMVPを獲得し、シーズン防御率はリーグトップ10に入る2.77をマークした2年目の福泉敬大(神港学園高−明石レッドソルジャーズ−神戸9クルーズ−巨人)らが挙げられる。

 そして、新人の中で最も注目したいのは、甲子園常連校の横浜高から入団したサウスポー山内達也だ。横浜高では1年時からエースナンバーをつけ、2年春には甲子園のマウンドに立った山内。その後、打者に転向しても4番を任されるなど、その身体能力の高さは群を抜いている。投手への未練を捨てられず、3年時に再び投手に転向し、NPBに行くための進路として独立リーグを選んだ。内角を突く強気なピッチングが身上で、変化球もスライダー、カーブ、カットボール、チェンジアップと多彩だ。182センチと長身のサウスポーは果たしていつ、開花するのか。

 また、今季から認められたNPBの育成選手派遣・受け入れ制度による2選手がオリックスから加入した。市立船橋高時代にはエースとして甲子園に出場し、高校生ドラフト4位で08年にプロ入りした右腕・山崎正貴と、11年に育成1位で入団したパワーのある打撃が魅力の稲倉大輝だ。

 山崎は183センチの長身から最速140キロ台後半の直球を投げおろし、カットボール、チェンジアップの変化球にもキレがある。一方、稲倉は高校時代には通算26本塁打を記録したスラッガーだ。ともにオープン戦では結果を出している。前期限りの在籍だが、チームにとっては大きな戦力となりそうだ。

 10年からの3年間、優勝から遠ざかっているのが富山だ。その富山に復帰したのが、創設時からリーグ一のスラッガーとして活躍し、2年目にはチームを優勝に導いた野原祐也(大宮東高−国士舘大−富山−阪神)だ。オープン戦では「4番・DH」で起用され、打線に厚みが増した。

 一方、投手陣には世界の野球を経験した2人が加入した。ひとりは大家友和。京都成章高から3位指名で横浜に入団し、その後ボストン・レッドソックス、モントリオール・エクスポズ、ワシントン・ナショナルズ、トロント・ブルージェイズ、クリーブランド・インディアンスと5球団を渡り歩いたメジャーでは、通算202試合に登板し、51勝68敗、防御率4.14を記録。日米で実績を積み上げてきたピッチングは、今季の見どころのひとつと言っていい。また、今年の第3回ワールド・ベースボール・クラシックでカナダ、メキシコを破り、2次ラウンド進出と躍進を遂げたイタリア代表メンバーとして、3試合に登板したルカ・パネラーティの入団も決定している。188センチの長身サウスポーのピッチングにも注目したい。