「G1を見に行けるなんて、本当に楽しみ!」

 新日本プロレスの“真夏の祭典“G1クライマックスを観戦できることに娘は興奮していた。都内にいると、いたる所でG1の告知が目に入り、何としても行きたかったそうだ。それに、つい先日、テレビ朝日のネット動画番組「中西ランド」にも出演させてもらい、中西学選手や小島聡選手と共演したのも生観戦したかった理由のひとつに違いない。
(写真:番組内で娘は「父の影響でスキンヘッドが好き」と邪道&外道ファンを公言。小島選手(左)がガッカリするシーンもあった)

 ちなみに小島選手は第1試合、中西選手は第2試合とオープニングのタッグマッチへの出場であった。今年のGI決勝戦は両国国技館ではなく、西武ドームに初進出とあって、選手やスタッフの意気込みが違っていた。

 G1クライマックスのツアーは今年、「空前絶後の夏」とのテーマを掲げ、これまでを上回る参加選手や日程でスタートした。厳しいスケジュールでタフな戦いが続く選手たちは、コンディションを維持するのが大変だったと思う。

 僕は、G1への出場経験はないが、一緒にサーキットを回っていた時、「ヘビー級じゃなくて良かった」と思うほど選手たちはボロボロになっていた。ただでさえ暑いのに連日ハードなシングルマッチが続くのだ。考えただけでも体中が痛くなる。プロレスラーとは、体を酷使する究極の職業だと思う。

 さて、決勝戦当日の8月10日は、なんと台風接近に伴い、あいにくの天候となった。しかし、会場に入ると1万8000人の熱烈なファンが、今か今かと試合開始を待ちわびてる。ドーム内は、すでにできあがっているのだ。
(写真:西武ドームでプロレスの興行が行われたのは史上初だった)

 いつも思うのだが、G1の会場の熱気は凄まじく選手がうらやましい。特に決勝の舞台となると一段とその熱は上がる。僕が経験したスーパージュニア決勝も激しい熱気が会場を支配していた記憶があるが、G1のそれは比較にならない。

 今年の決勝戦は、「キング・オブ・ストロングスタイル」の中邑真輔選手と「レインメーカー」オカダ・カズチカ選手の一戦であった。2人とも190センチ前後の長身なうえ、足が長くスタイル抜群だ。巨大なドームでも栄える両者がリングに向かい合っただけで絵になる。

 現在のレスラーは強いだけでは駄目だ。恵まれた体格とビジュアルも大切なのである。決勝の舞台に立つ男たちは、どちらもキャラクターが確立されている上、身体能力も高い。

 昭和のプロレスを見続けてきた僕から見ても、2年ぶりにオカダ選手が優勝を収めた今回の試合内容は素晴らしかった。現在の若いプロレスファンが、この決勝戦をどう感じたか気になる。

 そこで、一緒に観戦した18歳の娘に感想を求めた。
「わたしは最後の方の技の攻防にドキドキハラハラした。“この技で決まるんじゃないか??”と思っても、何度も何度もツーで返すお2人がとてもキラキラして見えた。わたしだったら、あんなに大技を食らい続けていたら、絶対に途中でキックアウトするのをやめてしまうと思う。個人的には、オカダ選手の打点の高いドロップキックに目を奪われた」

 娘も目を見張ったオカダ選手のドロップキックは、長年プロレスを見続けている僕も感嘆の声を上げるほどであった。連日ハードな試合をして、疲労が蓄積しているなかでもあの打点の高さである。試合の終盤でも跳躍力が衰えないところも、またスゴイ!

 そして、フィニッシュ技は、ショートレンジのラリアートである「レインメーカー」3連発だ。ドロップキック同様、ラリアートも誰もが使うシンプルな技である。しかし、オカダ選手の手にかかれば、ドームを揺るがすような大技に生まれ変わるから不思議だ。ここが彼の最大の魅力なのかもしれない。

 昨今のプロレスは、頭から落とすような危険で複雑な技が主流だ。だが、彼の魔法にかかれば、シンプルな技でもドームクラスの会場を沸かせられるのである。「レインメーカー」と呼ばれ、プロレス界に「金の雨を降らせる」と豪語する彼の一番の功績は、実はここにあるのではと思う。

 技がどんどん危険になっていくマット界で、彼の存在は頼もしい。OBとしては、この先もオカダ選手がマット界の中心を走ってほしいと心から願っている。

(このコーナーは毎月第4金曜日に更新します)
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