11日、ヨハネスブルグ・サッカーシティで開会式直後に行なわれた開幕戦グループリーグA第1節では、地元の南アフリカ(FIFAランキング83位)とメキシコ(同17位)が対戦した。序盤から主導権を握ったのはメキシコ。地元の大声援を背に動きの硬い南アを攻め決定機を作る。しかしゴールは奪えず、25分過ぎからは南アフリカも落ち着きを取り戻す。先制点が生まれたのは後半10分、中盤からのスルーパスを受けたシフェウェ・チャバララ(カイザー・チーフス)が左サイドを駆け上がり、強烈なシュートでゴールネットを揺らし南アフリカが大会初ゴールを奪う。一方、メキシコはポゼッションしながらゴールに迫り、34分にラファエル・マルケス(バルセロナ)のゴールで同点に追いつく。その後は一進一退の攻防が続くも両者得点なく、開幕戦は1対1のドローに終わった。

 ホームで大声援受けるも勝ち越しならず(ヨハネスブルグ、サッカーシティ)
南アフリカ 1−1 メキシコ
【得点】
[南] シフェウェ・チャバララ(55分)
[メ] ラファエル・マルケス(79分)

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 南アフリカ特有の応援グッズ、ブブゼラの音色が鳴り響く中、2010FIFAワールドカップは開幕した。開幕戦のカードは南アフリカ対メキシコ。“バファナ・バファナ”の愛称で知られる地元の代表チームを応援しようと、大勢の南アフリカ国民がスタジアムに駆けつけ、およそ95000人収容のサッカーシティは大入り満員となった。

 試合を序盤から支配したのはメキシコだった。動きの硬い南アフリカに対し積極的に攻撃を仕掛ける。特に右サイドバックのパウル・アギレール(パチューカ)が幾度となくオーバーラップを繰り返し、相手DFを翻弄した。2分にはアギレールが入れた低いクロスをGKイトゥメレング・クーン(カイザー・チーフス)が弾いたところにFWジオバニ・ドス・サントス(ガラタサライ)が詰めるがシュートは枠を外れる。18分には中盤でクリアボールを奪ったドス・サントスがミドルシュート、さらに20分には再びアギレールからのクロスをマルケスがゴール前であわせるなど南アフリカゴールを脅かす。

 メキシコに先制点が入ったかと思われたのは37分。左サイドからのコーナーキックをゴール正面でFWギジェルモ・フランコ(ウェストハム)が落とし、最後にシュートへ押し込んだのはFWカルロス・ベラ(アーセナル)。しかし、このプレーはオフサイドと判定される。ゴールライン付近にDFが1人いたものの、フランコがヘッドで落とした瞬間にはGKのクーンがベラのポジションよりも前に飛び出しており、南アフリカは絶体絶命のピンチを逃れた格好となった。

 25分過ぎには落ち着いてボールを持ち始めた南アフリカにチャンスが生まれたのは43分。左サイドからチャバララが突破し、中央へクロスを上げる。ゴール前には2人のDFがいたが、FWカトレゴ・ムフェラ(マメロディス・サンダウンズ)がうまくマークを外しヘッドであわせる。ボールは惜しくもムフェラの頭の横を抜けたが、触っていれば確実に1点の場面だった。

 前半を0対0で折り返すと、南アフリカは後半開始からツェポ・マファエラ(マッカビ・ハイファ)を投入し、左サイドの守備を修正する。これが効を奏し、前半から再三チャンスを作られていたアギレールのオーバーラップを抑えることに成功した。

 守備が安定し始めた南アフリカに先制点が入ったのは後半10分だった。センターサークル付近でボールを奪うと、MFガギソ・ディクガコイ(フルアム)が左サイドのスペースへスルーパスを通す。そこへ走りこんだチャバララが完全に抜け出しPAに侵入すると左足を鋭く振りぬく。強烈な無回転シュートがメキシコゴール右隅に突き刺さり、今大会初ゴールが生まれた。ボールを持たれていた南アフリカが、相手のDFラインの裏をつき見事なカウンターで先制点を奪った。

 先制点を奪われたものの、その後もメキシコがボールを持ち続けた。失点後にアギレールに替えてアンドレス・グアルダード(デポルティーボ・ラコルーニャ)、23分にベラに替えてクアウテモク・ブランコを投入する。この2人がボールを持つことでチーム全体を押し上げる余裕ができ、厚い攻撃を繰り出すようになる。特に37歳のブランコはスピードこそないものの、老練な動きと変幻自在なパスで南アフリカゴールへ向かっていく。

 メキシコに同点ゴールが生まれたのは34分だった。左サイドのショートコーナーからグアルダードがゴール前にクロスを供給する。メキシコはオフサイドラインギリギリにいた3人がゴール前にうまく入る。ファーサイドへ流れたボールをマルケスが落ち着いてトラップし、ノーマークでシュート。それまでファインセーブを続けていたクーンの左を抜け、豪快にゴールネットを揺らした。

 残り時間は中盤にスペースができ、両者ともに勝ち越しゴールを狙い、ゴールに迫る場面が多くなる。勝ち越しに向け最大のチャンスを作ったのは南アフリカの方だった。43分、GKからのロングフィードをムフェラがDFを背負いながらゴール前まで持ち込む。右足をうまくコントロールし、GKの動きをかく乱しながら放ったシュートは惜しくも左ポストに当たりゴールならず。9万人以上の観客が大きな歓声を上げたが、ポストに当たった瞬間、それは一気に悲鳴に変わった。試合はこのまま1対1で終了し、開幕戦は勝ち点1を分け合う形となった。

 戦前はメキシコ有利との見方があったものの、地元・南アフリカの健闘が目立った。いい形で先制点を奪った南アフリカだったが、残り時間35分を零封できるほどメキシコは甘い相手ではなかった。しかしながら、南アフリカの善戦は今後のアフリカ勢の躍進を予感させる内容で、それと同時に混戦のグループAは面白い展開となりそうだ。

(大山暁生)

【南アフリカ】
GK
クーン
DF
モコナエ
クマロ
ガクサ
スワラ
→マシレレ(46分)
MF
レチョロニャン
ディガコイ
チャバララ
モディセ
ピーナール
→パーカー(83分)
FW
ムフェラ

【メキシコ】
GK
ペレス
DF
オソリオ
ロドリゲス
サルシード
アギラール
→グアルダード(55分)
MF
マルケス
トラード
フアレス
FW
フランコ
→エルナンデス(72分)
ベラ
→ブランコ(68分)
G・ドス・サントス