28日、南アフリカワールドカップ決勝トーナメント1回戦がヨハネスブルグ・エリスパークで行われ、ブラジル(FIFAランキング1位)とチリ(同18位)が対戦した。南米対決となった試合はチリが立ち上がりから積極的に前へ出ようと試みる。しかし、同大陸の相手に負けるわけにはいかないブラジルは堅守でゴールを許さない。徐々に相手を押し返していくと前半34分、コーナーキックからDFファン(ローマ)のヘディングが決まり先制点をあげる。さらにその4分後、カウンターからFWルイス・ファビアーノ(セビージャ)が今大会3点目を入れてリードを2点に拡げた。後半に入ると、14分にMFロビーニョ(サントス)がダメ押し弾を叩き込み試合を決めてしまった。守っても攻めに人数を割いたチリを完封し3対0で完勝。準々決勝進出を決め、7月2日にオランダと対戦する。

 南米対決制し11大会連続ベスト8(ヨハネスブルグ・エリスパーク)
ブラジル 3−0 チリ
【得点】
[ブ] ファン(34分)、ルイス・ファビアーノ(38分)、ロビーニョ(59分)

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 史上最多の優勝回数5回を誇るブラジルは今大会でもグループリーグを首位で通過しベスト16入りを果たしている。今日の対戦相手チリとは過去2回W杯で戦い2勝、さらにここ10年でも一度も負けていない相手だ。同じ南米大陸の相手に世界の舞台で負けるわけにはいかない。今日はグループリーグで負傷したMFフェリペ・メロ(ユベントス)、MFエラーノ(ガラタサライ)に替わってラミレスとMFダニエウ・アウベス(バルセロナ)が先発で起用された。出場停止が明けたMFカカ(レアル・マドリッド)、右足を負傷し大事をとっていたロビーニョは先発に復帰を果たした。

 一方のチリは前戦の先発メンバーが3名出場停止となる緊急事態だ。これまで徹底して3−4−3を敷いてきたマルセロ・ビエルサ監督はこれまでCBに入っていたワルド・ポンセ(ウニベルシダ・カトリカ)を欠くため、4バックを選択しブラジルとの戦いに挑んだ。

 立ち上がりから攻勢を仕掛けたのはチリだった。王国を相手に先手を取られれば勝ち目はない。そう言わんばかりの強気の姿勢でブラジルにプレッシャーをかける。激戦となったグループHをハードワークで勝ち抜いてきた彼らはブラジルを相手でも少しもひるまなかった。

 対するブラジルは受けに回りはしたものの、守備陣が慌てることはほとんどなかった。前半のボール支配率、シュート数はイーブンだったが、チリにほとんど決定的な場面を作らせることはなかった。F・メロの欠場でジウベウト・シウバ(パナシナイコス)とのダブルボランチを組んだラミレスも安定した守備をみせ攻撃の芽を摘んでいく。徐々にブラジルがペースを引き戻し、攻撃態勢に入っていく。

 スコアが動いたのは前半34分。右サイドからのコーナーキックをDFマイコン(インテル・ミラノ)が高いボールでゴール前へ入れると、密集で競り合ったファンが強烈なヘディングシュートを放つ。GKクラウディオ・ブラーボ(レアル・ソシエダ)が懸命のセービングを試みるも、シュートはゴール左角へと吸い込まれブラジルが豪快に先制点をあげた。ファンが競り合った場所ではL・ファビアーノ、DFルシオ(インテル・ミラノ)もおり、ファンへマークにつくチリ選手は体を寄せることができなかった。見事なセットプレーで1点をリードしたブラジルが得点後は完全に主導権を握る。

 リードを許したチリはさらに前へ出てくる姿勢を強めるものの、そうなれば逆にブラジルの術中にはまる。先制からわずか4分後の38分。自陣からのカウンター攻撃で左サイドを突破したロビーニョがDF2人をひきつけてPA少し外からマイナスのパスを出す。それを受けたカカがダイレクトでゴール前へ優しいタッチでスルーパス。オフサイドラインギリギリから抜け出したL・ファビアーノがGKを右にかわしながらトラップすると、無人のゴールへシュートを流し込んだ。スピード豊かな3人がゴール前へ駆け上がり、あっという間に得点を奪ってしまった。流れるような攻めを見せたブラジルが同点を狙ったチリをさらに引き離した。

 後半に入ると、ビエルサ監督はホルヘ・バルディビア(アル・アイン)を投入し少しでも点差を埋めようとする。後半立ち上がりからバルディビアにボールを集めたチリは、FWアレクシス・サンチェス(ウディネーゼ)がサイドへ開きチャンスメイクするなど攻めの形を作る。それでもゴール前で黄色い壁を築くブラジルDFの前になかなかゴールを割ることはできない。

 中盤に段々とスペースが出来始めると、さらにブラジルがボールをじっくりと持つようになる。スペースと時間を与えれば、セレソンの選手は我々が驚くようなプレーを披露してくれる。

 3点目はまさにそのようなシーンだった。14分、センターライン付近でボールを奪ったラミレスが目の前にスペースがあると見るや、ドリブルで中央突破を仕掛ける。不意を突かれたチリDFは後手に回りラミレスを捕まえきれない。ゴール正面まで侵入したところでやっとDF3人が彼を囲んだものの、ラミレスには周りが十分見えていた。相手を引きつけると左から走りこんだロビーニョへラストパス。これをロビーニョが右足でダイレクトにシュートすると、ボールは右サイドネットへとコントロールされ、見事なゴールが決まった。的確な状況判断から始まったドリブルと冷静なパス、そして落ち着き払ったシュートで、格の違いを見せつけるダメ押しゴールとなった。これで試合は3対0。決定的な差がつき、ブラジルがベスト8進出をほぼ手中に収めた。

 その後、チリもあきらめずにゴールを狙い続けたが、GKジュリオ・セーザル(インテル・ミラノ)やルシオを中心とした壁をついには突破できずこのまま90分が経過し試合終了のホイッスルが鳴る。ブラジルがチリに圧勝し11大会連続16回目のべスト8入りを決めた。

 ドゥンガ監督の率いるブラジルは、しばしば守備的と言われる。しかし、攻撃陣も魅力があり破壊力十分だ。今回のチームで特筆すべきはカウンターの速さ。今日の2点目は前線の3人でいとも簡単にDFを崩してしまった。L・ファビアーノが3ゴールをあげロビーニョも今日の試合でゴールを決めた。あとはカカの得点を待つのみだ。コートジボワール戦で負傷したエラーノも次戦ではピッチに立つ可能性がある。ベストメンバーで臨めばオレンジ軍団との準々決勝は好ゲーム必至だ。過去のW杯でも好勝負を演じてきた2チームがどのような試合を展開するのか。ベスト8ステージ屈指の好カードは7月2日、ポートエリザベスで行なわれる。

(大山暁生)

【ブラジル】
GK
J・セーザル
DF
ルシオ
ファン
マイコン
M・バストス
MF
G・シウバ
ラミレス
D・アウベス
ロビーニョ
→ジウベルト(85分)
カカ
→クレベルソン(82分)
FW
L・ファビアーノ
→ニウマール(76分)

【チリ】
GK
ブラーボ
DF
フエンテス
コントレラス
→テージョ(46分)
ハラ
イスラ
→ミジャール(62分)
MF
カルモナ
ボーセジュール
FW
M・ゴンザレス
→バルディビア(46分)
サンチェス
スアソ