抜き打ち検査の結果、今季のミズノ社製の統一球の反発係数が基準値を上回ることが判明した。昨季の「飛ぶボール」から、今季は「飛び過ぎるボール」になったわけだ。

飛び過ぎるボールの影響は至るところに表れている。外野手は背後を襲う打球への対応に苦慮している。バッテリーは配球の変更を迫られることになった。

その余波は内野手にも及んでいる。ゴロのスピードが昨季よりも明らかに速いのだ。昨季までなら内野手が追いついていたと見られる打球が、外野へと抜けている。

それを防いでいるのがカープのセカンド菊池涼介である。昨季、528という補殺の日本記録をつくった菊池は、その実績を糧にして、今季、さらに守備範囲を広げているような印象を受ける。

並のセカンドが逆シングルで捕るところを菊池は回り込んで捕る。飛びついて捕るところは逆シングルで対応する。見るところ、一般の選手に比べて左右とも1メートルは守備範囲が広いのではないか。

飛び過ぎるボールの影響でゴロのスピードが速くなった今、菊池の守備範囲の広さは、チームに大きなアドバンテージをもたらせている。「彼がいるといないとでは1試合あたり2、3本、被安打の数は違ってくる」とカープの首脳陣は語っていた。

レギュラーになって2年目。23年ぶりの優勝を狙うカープにあって、菊池には脇役から主役への期待がかかる。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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