日本学生野球協会は今月、元プロ227人に学生野球資格の回復を認定した。これにより高校、大学での指導が可能になった。

この227人の中には、カープOBもたくさん含まれていた。外木場義郎、宮本洋二郎、水沼四郎、高橋里志、山田勉……。

 元プロによる指導は、間違いなくアマチュアのレベルを引き上げるだろう。私に言わせれば、遅すぎたくらいである。日本球界全体にとってはプラスだ。

 しかし、アマの場合、ただ技術を教えればいいという単純なものではない。とりわけ高校生の指導者は日々の生活にも目を光らせなければならない。

 昨夏の甲子園で初出場初優勝を果たした前橋育英(群馬)の監督・荒井直樹は社会人野球の出身である。

 荒井のモットーは「凡事徹底」。日々の生活を大事にしなければ、野球はうまくならない――。自らも寮に住み、選手たちの食事は夫人が作る。

 荒井は語った。「女房に言わせれば、洗濯物の畳み方ひとつで、その子の心理状態がわかるというんです。たとえば、これまでは丁寧に洗濯物を畳んでいた子が、急に雑になってきた。

 その場合、女房は“最近、あの子どうなの?”と聞いてきます。“確かに、もうひとつかな……”と。このように何気ない日常生活の中から、いろいろなものが見えてくるんです」

 野球が好きなことはもちろんだが、子供が好きなこと、指導が好きなこと。場合によっては、自らの生活を犠牲にすることもいとわない覚悟を持っていること。元プロなら、誰でも務まるほどアマの指導者は甘くない。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)
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