「今季のカープは堂林翔太が故障して、試合に出なくなってから強くなったでしょう。それを本人が、どう自覚しているか。守備にしろバッティングにしろ、同じ失敗を繰り返す。バッティングについて言えば、同じようなボールに空振りをしている。いったい、どういう考えで野球をしているのか……」
 こう語ったのは、今季限りでユニホームを脱いだ元東京ヤクルトの宮本慎也である。

 続けて、こちらも今季限りで現役を引退した元中日の山崎武司の堂林評。
「今季のカープのCS出場の立役者は彼ですよ。彼がいなくなってから、カープは見違えるようによくなった。元々、彼は自らの力でポジションを奪いとったわけではない。野村(謙二郎)監督からポジションを与えられたわけでしょう。それなら、もっと努力しなくちゃ。中日のベンチから見ていると、堂林ほど楽なバッターはいなかった。最後は落ちるボールをクルリン(空振り三振)ですからね。正直言って、彼が試合に出てくれている方が助かりましたね」

 歯に衣着せずに2人は答えた。これぞ言葉による“愛のムチ”である。

 堂林は可能性を秘めた選手である。12年にはチームでただひとりフル出場を果たし、14ホームランを記録した。将来の「カープを背負って立つ選手になる」と誰もが信じて疑わなかった。

 しかし、今季は伸び悩んだ。宮本や山崎が口にするように、同じ失敗を繰り返しているように映る。

 いったい、どこに低迷の原因があるのか。球団は外部からの意見にも耳を傾け、再生への手がかりを本人とともに探って欲しい。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)
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