高校3年時の背番号は「11」。一度も甲子園の土は踏まなかった。だが、横浜商科大学の恩師・佐々木正雄監督に見初められ、大学では1年春にリーグ戦初登板を果たし、2年からは主力として活躍。同年、日本代表に選出され、日米大学選手権に出場した。今秋は8試合に登板し、6勝1敗、防御率0.42の好成績を挙げ、最優秀投手、ベストナインに選ばれた。全国では無名だった高校時代から大きく成長し、“ドラ1”の仲間入りを果たした岩貞を直撃した。
―― ドラフト当日はどんな心境でしたか?
岩貞: ドラフト会議が始まる前、西宮(悠介・東北楽天5位)と一緒に応接室で待機していたのですが、お互いに「どの球団になるんだろうか」「何位で指名されるんだろう」と、いろいろと緊張しながら話をしていたのですが、2人とも段々と不安の方が大きくなっていって「本当に指名されるのだろうか……」と言っていたんです。実際に自分の名前が呼ばれた時は、正直実感がわきませんでした。指名後、いろいろとインタビューを受けていく中で、ようやく現実味が帯びてきたという感じでした。

―― 高校では踏めなかった甲子園がホームになります。
岩貞: 高校2年の夏、チームメイトと一緒に甲子園で試合を観たのですが、その時はとてつもなく広い球場に思えたことを覚えています。「よし、来年こそは自分たちもここで試合をやるんだ」と思ったのですが、結局行くことができませんでした。それだけに、こういうかたちで甲子園がホームになるというのは本当に嬉しい。当時、甲子園に行けなかったチームメイトたちの分も、しっかりと甲子園のマウンドで投げられるように頑張りたいです。

―― 自分の最大の武器とは?
岩貞: スピードではなく、ボールのキレや強気なインコース攻めという部分で勝負してきたので、プロでもその部分は変えずにやっていきたいと思っています。

―― ピッチングでのこだわりは?
岩貞: 投げるリズムも大事ですが、一番はボールの良し悪しに最も影響する腕の振りにこだわっています。現状に満足することなく、改善点があればその都度直していこうと思っていますが、プロでもその部分を一番にこだわっていきたいですね。その中で、右バッターのインコースを突くクロスのボールが走っている時は、一番理想のピッチングができているので、そのボールがバローメーターになっています。

 失投から得た大きな気づき

 技術的にも精神的にも学ぶことが多かったという大学4年間。同じサウスポー、同級生の西宮投手とは良きライバルとして切磋琢磨してきた。そのプロへの基盤が築き上げられた4年間を振り返ってもらった。

―― 大学4年間で、転機はありましたか?
岩貞: 2年春の関東大戦で初めて完封をしたのですが、その試合で自分のスタイルに気付いたんです。それまでは力で抑えにいこうとばかりしていたのですが、その時に気付いたのは、いくら力んだところで球速は2、3キロしか変わらない。スピード表示からしたら違いがあるように思えるけれども、バッターにしたら2、3キロなんてそれほど大きな差はない。だったら、2、3キロのスピードを求めるよりも、丁寧にコースを突いた方がいいのではないか、という気持ちが芽生えたんです。

―― なぜ、そういう気持ちになったのでしょうか?
岩貞: その試合の前、リーグ開幕戦で中継ぎとして登板したのですが、右バッターにインコースの真っ直ぐを投げたんです。2ストライクに追い込んでいたので、三振を狙って力を入れて投げたら、ボールがシュート回転して真ん中気味に入ってホームランを打たれてしまいました。それで、翌日先発したした時に、スピードよりもコントロールを意識したんです。そしたら抑えることができた。この2試合は、自分にとって本当に大きかったです。

―― 最も苦しかった時期は?
岩貞: 昨年1年間は、なかなか成績が出なくて苦しかったですね。練習やブルペンでは自分の理想に近いボールが投げられているという感触があったのですが、その割には成績が残せなかった。原因がわからなくて、結構思い悩んだ1年でした。

―― どうやって乗り越えたのでしょうか?
岩貞: いろいろなピッチャーをの映像を見て、参考にしながら、自分なりにフォームを改良しました。ひとつは体重移動の際、着地した右足にどれくらい体重を乗せるかということ。それまでは、上げた右足を着地した瞬間、左右両方に50%ずつ、ほぼ均等に体重を乗せていたんです。でも、そうすると、例えば体重が100キロだとして、半分の50キロ分の力でしか左足を前に蹴り出すことができないんです。そこで、前の右足に3、後ろの左足に7の割合で体重が乗るように着地するようにして、70キロ分の力を一気に前に蹴り出すようにしました。そうしたところ、ボールにも力が伝わるようになりましたし、リリースも安定したんです。

―― 4年間で一番成長したと感じることは?
岩貞: 人間性の部分だと思います。チームとして「人の嫌がることを率先してやる」というのが柱にあるので、そういうことを心掛けるようにするうちに、人の気持ちがわかるようになったかなと。例えば、自分がいい思いをする時には、必ず逆の思いをする人もいるわけで、そういうことを考えながら行動に移すようになりました。

―― 4年間、チームメイトとして切磋琢磨してきた西宮投手に対しては、どう感じていましたか?
岩貞: 西宮は1年春から主戦で投げていて、自分よりスピードもありましたし、とにかく西宮に追いつくこと、追い抜くことを目標にやってきました。自分がスピードで追いついても、また西宮が更新したりして、常に西宮のピッチングを見ては負けないようにと思っていましたし、いいいところは吸収したいと思いながらやってきました。いい相乗効果の中で4年間やってこれたのかなと思いますね。

―― プロで投げ合いたいですか?
岩貞: 同じ大学出身の同級生、しかも同じ左となれば注目もされると思うので、交流戦などで機会があれば投げ合ってみたいですね。

 幼少時代、高橋由伸(巨人)に憧れを抱いていたという岩貞。「対戦できるチャンスがあれば嬉しい」と楽しみにしている。既に即戦力として期待されているだけに、1年目からチャンス到来の可能性は十分にある。“伝統の一戦”で憧れていた強打者に対して、どんなピッチングを披露してくれるのか。今季、高卒新人ながら8勝を挙げた藤浪晋太郎に続く“ドラ1”の活躍が期待される。

岩貞祐太(いわさだ・ゆうた)
1991年9月5日、熊本県生まれ。小学3年で野球を始め、必由館高1年秋に投手に転向した。横浜商科大では1年春にリーグ初登板を果たし、2年春には5勝1敗、防御率0.93で最優秀選手に選出された。同年、日本代表として日米大学選手権に出場。4年秋には6勝1敗(うち完封3)、防御率0.42で最優秀投手とベストナインに輝いた。182センチ、75キロ、左投左打。

(聞き手・斎藤寿子)

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