今年のカープのドラフト1位は、即戦力投手を指名するそうだ。

「1位は大学・社会人。どれだけ即戦力に近い先発をとれるか。見る限りでは吉田(一将、JR東日本)が一番素晴らしい」と松田元オーナーがコメントしたそうだ。

 これは、どういうことかと言うと、まず人気の松井裕樹投手(桐光学園高)を回避するということだ。競合してクジをはずすリスクを避けるのでしょう。

 即戦力の大学・社会人投手といえば、他にも、大瀬良大地(九州共立大)や浦野博司(セガサミー)らが常識的にはあげられる。そのあたりで、しかも単独指名できそうな選手を狙うことになるのだろう。

 それもいいだろう。どんなチーム状況のときでも、柱になる投手は必要にはちがいない。

 しかしなぁ、北海道日本ハムみたいに、その年で一番いい選手を1位指名する、という方針は打ち出せないものだろうか。

 私だったら、森友哉捕手(大阪桐蔭高)を1位指名する。

 この意見は、きっと批判のほうが多いだろう。なぜ、また左打者をとらなきゃいけないのか。いま必要なのは、右の長距離砲だろう。おまけに、森は身長170センチと小柄ではないか……。

 でも、今年見たアマチュアの打者で、私は森が一番いいと思う。必ず木製バットでも打てるスイングをしている。たしかに小柄だけど、パンチ力がある。最大限成長すれば、若松勉(元ヤクルト)みたいになれるのではないか。

 丸佳浩や松山竜平と似たようなタイプではないか、同じような打者ばかり獲ってどうする、という批判には、「では、丸よりも松山よりも強打者に成長したら、どうするんですか」と反論したい。その可能性は、十分にある。

 おそらく森も競合になるだろう。クジにはずれたら、大学・社会人の即戦力はとれないかもしれない。

 それでもいい。次善の策として、地元・瀬戸内高の山岡泰輔投手をとろう。いきなり、山岡1位でもいいくらいの素材だと思う。

 これまた、批判があるだろう。まず言われるのは、プロの投手としては小柄だという点だろう。もちろん、投手は背が高いほうが有利である。ボールに角度がつく。

 しかし、彼の投球を見ましたか。非常にきれいなフォーム(ちょっと前田健太的)で、速球とスライダーを投げる。ストレートの質がいいし、スライダーは、いいときには消える。

 感覚的な言い方をすれば、打者の手元でフッと消えて落ちる。松井裕樹のスライダーを剛とすれば、こちらは柔か。質においては遜色ない。

(彼は甲子園のあと、肘を痛めていたことを明かした。そのわりには、18U世界選手権で投げまくっているのが気になるが)

 即戦力の先発投手が必要だ、というのはよくわかる。

 しかし、ドラフトは可能性を買う場でありたい。たとえば、山岡―森のバッテリーとか、そういう魅力のある、明日のカープを夢見たいものである。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します) 
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