9月3日、亀田大毅(亀田)が、ロドリゴ・ゲレロ(メキシコ)に判定勝利を収め、IBF世界スーパーフライ級王座を獲得した。
 決して誉められた内容ではなかったし、レベルの高い闘いでもなかった。互いに減量に苦しんだのだろう。そのためにスタミナを気にして前半は打ち合おうとはせず、後半に勝負を持ち込もうとしていた。結局は決定打を欠きあう。「勇気」が感じられない試合だった。
(写真:7月には長男・興毅、8月は三男・和毅がタイトルマッチに勝利。史上初の3兄弟での世界王者となった)
 JBC(日本ボクシングコミッション)がIBFとWBOを認可したことで、また日本人世界チャンピオンが増えた。この日、王者となった亀田を含めて、いま、ボクシングの日本人世界チャンピオンは、男子だけで10人もいるのだ。

WBA世界ミニマム級=宮崎亮(井岡)
IBF世界ミニマム級=高山勝成(仲里)
WBA世界ライトフライ級=井岡一翔(井岡)
WBC世界フライ級=八重樫東(大橋)
IBF世界スーパーフライ級=亀田大毅(亀田)
WBA世界バンタム級=亀田興毅(亀田)
WBC世界バンタム級=山中慎介(帝拳)
WBO世界バンタム級=亀田和毅(亀田)
WBA世界スーパーフェザー級=内山高志(ワタナベ)
WBC世界スーパーフェザー級=三浦隆司(帝拳)

 これにWBA世界フライ級暫定王者である江藤光喜(白井・具志堅)を加えるならば、11人ということになる。日本人選手が、世界を舞台に活躍するのは、決して悪いことではないが、こんなに日本人世界チャンピオンがいると、その価値も下落してしまう。

 特にバンタム級。このクラスには、いま3人の日本人世界チャンピオンがいる。亀田興毅(WBA)、山中慎介(WBC)、亀田和毅(WBO)。これは、すぐに王座統一戦に向けて動き出すべきではないか。

 そもそも世界チャンピオンとは、世界最強の男に与えられる称号である。ひとつの階級に何人も必要ない。ことに同じ階級に日本人世界王者が3人というのは異常な事態だ。3人の中で、誰が一番強いのか、誰が本当のチャンピオンなのかを知りたくなる。

 亀田の兄弟対決は避けるにしても、興毅、和毅のいずれかが、山中と闘うとなれば、これこそがファンの望むカードとなる。いまの状態から3人の王者それぞれが、外国人選手相手に防衛戦を重ねたとしても、ファンは熱くなれないだろう。

 まずはWBC王者の山中とWBO王者の和毅が戦ってみてはどうだろうか。仮に山中が勝てば、その次の試合でWBA王者の興毅とグローブを交えるのである。これが実現すれば、ボクシング人気は過熱する。
(写真:8月に4度目の防衛を果たした山中は試合後のリング上で、「亀田君、統一戦をして盛り上げましょう」と呼びかけた)

「それは難しいでしょう。山中は帝拳所属だから日本テレビ、亀田兄弟にはTBSが各々ついている。どちらの局で放送するかという問題が生じますよ」
 わけ知り顔で、そんな風に言う人もいる。もうボクシング界がテレビ局の意向に支配される時代が終わっていることに気づいていないのだろう。

「視聴者あっての番組。ファンのニーズに応えるべく最高の試合を提供したい」
 常々、そう話しているテレビ局が、自分たちの損得勘定で「最高のカード」を消滅させてよいはずがない。そのことは関係者も、よくわかっている。

 私案だが、最初の山中と和毅の試合は、日本テレビが中継する。ここで山中が勝てば、次の興毅との試合はTBSで流す。もし、山中が和毅に敗れれば、ここで一区切りだが、その時点でTBSは箔のついた2人の王者の試合放映権を維持しているのだから、それでよいではないか。

 このチャンスは逃してはならない。
「勇気」ある闘い……バンタム級王座統一戦の実現を切に望む。

----------------------------------------
近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー〜小林繁物語〜』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』(汐文社)ほか。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
◎バックナンバーはこちらから