11日、南アフリカワールドカップ決勝がヨハネスブルグ・サッカーシティで行われ、どちらも初優勝を狙うオランダ(FIFAランキング4位)とスペイン(同2位)が対戦した。序盤からスペインがポゼッションを高めペースを掴みかけるものの、中盤から積極的な守備を展開したオランダが流れを簡単に渡さない。前後半ともにボールを持つスペインとカウンターを狙うオランダという図式で互いに決定機を作るが、ゴールは生まれることなく延長戦に突入する。延長ではスペインが一方的に攻め続けオランダに退場者が出ると、後半11分にMFアンドレス・イニエスタ(バルセロナ)が待望の先制点を奪い、スペインが優勝を大きく引き寄せる。試合はそのまま1対0で終了し、スペインが悲願の初優勝を飾った。一方のオランダは32年ぶり3度目となる決勝の舞台でも頂点に立つことは叶わず無念の敗北となった。大会得点王はダビド・ビジャ(バルセロナ)、ヴェズレイ・スナイデル(インテル・ミラノ)ら4名が5ゴールで並んだ。

 PK戦寸前の決勝点で8カ国目の優勝国誕生(ヨハネスブルグ・サッカーシティ)
オランダ 0−1 スペイン
【得点】
[ス] アンドレス・イニエスタ(116分)

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 2大会連続で欧州同士の戦いとなった決勝戦。どちらが勝っても初優勝となるオランダとスペインの試合は意外にもW杯の舞台では初顔合わせとなった。両者ともに今大会のベストメンバーで臨み好ゲームが期待された。

 まずビッグチャンスを作ったのはスペインだ。5分、右サイドからのフリーキックをゴール前で待っていたDFセルヒオ・ラモス(レアル・マドリッド)がヘディングであわせる。ここはGKマールテン・スケテルンブルク(アヤックス)が素晴らしい反応をみせゴールを許さないものの、スペインはボールを持つことで試合の主導権を握ろうと試みる。

 対するオランダは中盤の底に入ったマルク・ファンボメル(バイエルン・ミュンヘン)とナイジェル・デヨンク(マンチェスター・シティ)が高い位置からプレッシャーをかけ続け、相手のキーマンであるMFシャビ・エルナンデス(バルセロナ)やイニエスタに自由を与えない。ボールは持たれながらも互角の戦いに持ち込み、拮抗した試合展開となった。

 ただし、オランダは激しい守備の代償として多くの警告を受けてしまう。前半だけでも3枚のイエローカードを提示された。早い時間に退場者が出れば試合を壊しかねない。まさに薄氷を踏むような試合運びとなった。

 後半も同じ流れで試合は続いた。先に決定的なシーンを迎えたのはオランダだ。17分、DFからのフィードをつないだスナイデルが素早く前線にスルーパスを通すと、ラインの裏に抜け出したのはFWアリエン・ロッベン(バイエルン・ミュンヘン)。DF2人を振り切りPA内に侵入するとGKと1対1になる。だが、ここでロッベンの前に立ちはだかったのはイケル・カシージャス(レアル・マドリッド)だ。最後までロッベンの動きを見極め、ロッベンの放ったシュートはカシージャスが伸ばした右足に阻まれ、オランダは絶好のチャンスを逃がした。

 スペインにビッグチャンスが生まれたのは、その7分後だ。右サイドからヘスス・ナバス(セビージャ)が突破するとゴール前へクロスをあげる。一旦はDFに当たるものの、ビジャが粘り強くシュートを放つ。ここはDFヨン・ハイティンガ(エバートン)が必死のクリアをみせ得点にはならないものの、スペインがオランダゴールへと迫る機会が増えていった。それでもオランダも体を張った守りをみせ、90分間で互いにゴールは生まれず、前回大会に続き決勝戦は延長へと突入した。

 延長に入ると、試合は一方的なスペインペースとなった。途中交代のセスク・ファブレガス(アーセナル)がシャビやイニエスタとうまくパス交換しチャンスを演出していく。前半終了までにも決定的なチャンスは4回あった。ステケルンブルクの好セーブなどがあり、いずれもゴールにはならなかったものの、スペインに得点が生まれるのは時間の問題かと思われた。

 スペインにとって強烈な追い風が吹いたのは後半4分。ゴール前へ抜け出しかけたイニエスタをハンティンガが背後から倒してしまう。主審はハイティンガにこの日2枚目のイエローカードを出し、スペインは数的有利な立場となる。

 ただでさえ勢いに乗っているスペインが人数でも相手よりも有利になればスコアが動くのは当然だ。11分、左サイドでパスを受けたフェルナンド・トーレス(リバプール)がクロスをあげる。一度はDFに当たるものの、これを拾ったセスクが右サイドへとラストパス。そこへ開いていたイニエスタが右足で強烈なシュートを放つと、それまで好セーブを連発していたステケルンブルクの右手を弾き返し、ボールはオランダゴールへと吸い込まれていった。残り4分での劇的な決勝ゴールでスペインが大きく優勝を手繰り寄せた。

 このまま試合は終了しスペインが悲願の初優勝を飾った。欧州勢がヨーロッパ以外の大会で優勝するのは史上初めての出来事であり、スペインは98年大会のフランス同様、初めての決勝進出で優勝まで辿り着いた。オランダは3度目の決勝進出も優勝には届かず。両軍あわせたイエローカードの枚数は14枚と過去の決勝戦で最多記録を更新してしまった。

“欧州王者はW杯で優勝できない”というジンクスを打ち破ったスペイン。EURO2008に続いてビッグタイトルを手にした。ビセンテ・デル・ボスケ監督は「2年後のEUROまでこのチームのサイクルが続く」と話すように、この先も無敵艦隊は王者に君臨することになる。世界中の国々が“打倒スペイン”を旗印に、4年後のブラジルを目指す。看板に偽りのなくなった“無敵艦隊”は今後も世界中のサッカーファンを魅了していくに違いない。

(大山暁生)

【オランダ】
GK
ステケルンブルク
DF
ハイティンガ
マタイセン
ファン・デルビール
ファン・ブロンクホルスト
→ブラーフハイト(104分)
MF
ファン・ボメル
デヨンク
→ファン・デルファールト(99分)
スナイデル
FW
カイト
→エリア(71分)
ロッベン
ファン・ペルシー

【スペイン】
GK
カシージャス
DF
プジョル
ピケ
カプテビラ
S・ラモス
MF
ブスケッツ
X・アロンソ
→セスク(87分)
シャビ
イニエスタ
ペドロ
→ナバス(60分)
FW
ビジャ
→F・トーレス(105分)