キラ・カアイフエが横浜DeNAの左腕・田中健次朗のカーブをとらえた4号ホームラン(7月11日)は、たしかにすごかった。左対左のカーブに対して、一瞬ためてフルスイング。横浜スタジアムの上段である。

 すわ、救世主出現か、と騒ぎたくもなる。はたして、どう評価すべきなのだろうか。

 7月16日の中日戦が参考になると思う。なぜなら、相手捕手は谷繁元信である。谷繁はキラをどう攻めたか(ちなみに、投手は中日期待の若手右腕・西川健太郎)。

第1打席
(1)外角ツーシーム系 ストライク
(2)内角低め落ちる変化球 ボール
(3)沈む変化球(チェンジアップ?) セカンドゴロ

第2打席
(1)低めに落ちる変化球 ボール
(2)内角カットボール 大きなライトフライ

第3打席
(1)内角高め抜け球(谷繁は外角低めに構えている) ボール
(2)外角低めツーシーム ストライク
(3)内角高め(これも抜けた球。谷繁の構えは外角) ファウル
(4)内角高めストレート キャッチャーへのファウルフライ

 ごらんの通り、3打席とも打ち取られてしまったわけだが、このリードから見てとれるものは何だろうか。

 2つあると思う。第2、第3打席で勝負球を内角ストレート系にしていること。第1、2打席で低めに落ちる球を使っていること。

 外角低めは当然使うとして、谷繁は低めの落ちるボールと内角ストレート系で攻略しようとしていたと思われる。そこにキラという打者に対する、弱点を含めた評価をかいま見ることができる。

 ただし、ニック・スタビノア、ブラッド・エルドレッドに比べれば、キラのほうが上なのではないだろうか。少なくともDeNA投手陣のように甘いところにくれば、それを一発で仕留めるだけの力はある。

 ニックとエルドレッドは、なかなか当たりませんでしたからね。そういう意味では、少しは期待してもいいのだろう。

 むしろ、別のことが気になる。今季、ここまでの打者成績を見ると、チームの将来も考慮して、3番・丸佳浩、5番・松山竜平は固定したほうがいいと思うのだ。そういう長期的視野に立った育成プランは必要なはずである。

 ならば、なぜシーズン途中で新たに契約した外国人選手が左打者だったのだろうか(キラを4番に入れると3、4、5番に左打者が並ぶことになる)。それとも、4番は外国人選手に任せる。これが最優先で、たとえば松山は左投手のときにはスタメンをはずす、という方針なのだろうか。

 それは少々、長期的なビジョンを欠く構想だと思うのだが……。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します)
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