近年、身に着けて持ち歩くことができるウェアラブル端末が広がりを見せつつある。スポーツ界では選手の動きをチェックする際に使われたり、体温や血圧、心拍数など健康状態を把握するために用途が広がっている。

「正しい数値を得るためには、着用する際の素材がいかに体にフィットしているかが重要になるのではないでしょうか。素材が体とこすれたり、引っ張ったりしてストレスを与えないことが求められると感じます」
山本化学工業の山本富造社長はそう指摘し、「バイオラバーはウェアラブル端末に最適な素材」とアピールする。

バイオラバーは独立気泡によるハニカム(蜂の巣)構造でできており、3次元に伸縮する。そのため、皮膚や筋肉にストレスを感じさせない素材なのだ。

このほど、このラバー素材の特長を裏付ける興味深い実験結果が出た。京都工業繊維大の繊維科学センターの浦川宏センター長による3次元測定によって、他の繊維素材とは異なる特徴が表れたのだ。

「通常の繊維素材は縦と横の二軸で構成されていますから、縦、横、高さの3次元で一方向に引っ張ると、その方向に全体的に寄っていく。人間の皮膚とは異なる動きをしてしまうんです。一方、我々のラバー素材は引っ張っても、その方向には寄り過ぎない。人間の皮膚に極めて近い動きをするそうです」

これまで着用時の違和感のなさを追求してきた山本化学工業にとって、この実験結果は取り組みの正しさを実証するかたちとなった。この結果に基づいて、山本社長はウェアラブル端末素材への参入を考えている。

「動いていて皮膚や筋肉にストレスを感じさせなければ、それだけ端末での測定数値も通常時と変わらないものが出てくるのではないでしょうか。現状を正しく把握する上で、バイオラバーは優れた素材だととらえています」

加えて山本社長は「バイオラバーには、もうひとつのメリットがある」と強調する。
「バイオラバーには血流改善効果があります。ウェアラブル端末を着用することで体のコンディションを良くするという一挙両得を目指せるはずです」

バイオラバーによって血流が改善し、低体温状態が解消すれば、着用者にとってプラスになる。ウェアラブル端末を継続使用して、その改善状況がタイムリーに可視化される点も、効果を実感してもらえることにつながると山本社長は考えている。

「普通のウェアラブル端末で数値を知ることができても、それを改善するには、他の方法を用いなくてはいけません。バイオラバーを素材にすることで健康状態もアップさせるという機能も組み込むことができます」

バイオラバーで未来型のウェアラブル端末を提案したい。山本社長の夢は大きく膨らんでいる。

山本化学工業株式会社