25日、第15回世界陸上競技選手権4日目が中国・北京で行われ、男子200メートル予選に藤光謙司(ゼンリン)、高瀬慧(富士通)、サニブラウン・アブデル・ハキーム(城西大城西高)が出場した。藤光は1組2位(20秒28)、高瀬は2組4位(20秒33)、サニブラウンは4組2位(20秒35)に入った。藤光とサニブラウンは着順で準決勝へ進出。高瀬は全体18位のタイムで、予選通過ライン(4位以下選手の中で上位3人)をクリアした。世界記録保持者のウサイン・ボルト(ジャマイカ)、今季世界ランキング1位のジャスティン・ガトリン(米国)は順当に準決勝へとコマを進めた。
 日本が誇る韋駄天スプリンター3人衆が、まず第一関門を突破した。

 先陣を切ったのは、日本選手団主将を務める藤光だ。予選1組に登場し、優勝した日本選手権同様に金箔シールを身体に貼り付け、レースに臨んだ。3位以内に入れば、着順で次のステージへと進める。今シーズン自己ベストを連発している好調の藤光は、同組の8人と自己ベストを比較しても3番目の記録を持つ。それでも「予選からレベルの高いレースになると思っていたので、しっかり走らないと足元をすくわれる」と気を引き締めた。

 2レーンの藤光はスタートから勢いよく飛び出すと、好位置をキープ。直線に入ると、イザイア・ヤング(米国)を抜き、先頭に立った。最後はラミーユ・グリエフ(トルコ)にかわされたものの、20秒28。2位でフィニッシュし、危なげなく着順での準決勝進出を決めた。

 2番手は2組に入った高瀬。藤光同様に今シーズン好調で100メートルと200メートルで自己記録を更新した。200メートルの20秒14は日本歴代3位、現役では藤光の20秒13に次ぐ2位のタイムだ。だが、この組はアロンソ・エドワード(パナマ)、チュランディ・マルティナ(オランダ)、クリストフ・ルメートル(フランス)と自己ベスト19秒台の強豪揃いの厳しい組み合わせとなった。

 スタートから飛ばしたものの、高瀬は直線で並ばれる苦しい展開。エドワード、マルティナ、ルメートルには先着を許したものの、4位はなんとか死守した。20秒33のタイムは2組を終えて4位以下の選手の中ではトップ。高瀬は残り5組の結果を祈るように朗報を待った。

 日本勢のラストは最年少16歳のサニブラウン。シニアデビューとなった今シーズン、日本選手権で100メートルと200メートルで2位に入った。同世代と争った世界ユース選手権では、力の差を見せつけ、短距離2冠を達成。16歳172日での世界選手権出場を果たし、大会最年少記録を更新した。煌めき始めた日本の原石の世界選手権デビュー戦は、ガトリンと同組の予選4組に入った。

 世界のトップスプリンターたちを前にしても、サニブラウンは物怖じしない。大外の9レーンから大きなストライドで加速。前を走るガトリンをとらえることはできなかったが、フィニッシュで胸を突き出し、飛び込んだ。ゴール前で流したニッケル・アシュミード(ジャマイカ)をわずかにかわし、2位。着順で準決勝進出を決めた。

 堂々のデビューにも、サニブラウンは「後半、間延びしてしまって足が回らなかった」と反省。「そこを修正すれば、いいタイムが狙えると思います」と、準決勝での自己記録(20秒34)更新に自信を覗かせた。

 29歳の藤光が「明日の準決勝が勝負」と語れば、16歳のサニブラウンは「全力で挑みたい」とチャレンジャーとして臨む。26歳の高瀬はタイムで拾われ、ギリギリの予選通過。安堵の表情を浮かべた後、「あとは自分を信じて走る」と決意を新たにした。2003年パリ大会での末續慎吾以来のファイナルへ――。日本の3本の矢が、ギアを上げてくる世界の猛者たちと競り合い、ゴールを射抜く。

(文/杉浦泰介)