いよいよ北京五輪女子マラソン代表に向けた熾烈な戦いが始まる――。
 11月18日、東京・国立競技場を発着点に開催される「2007東京国際女子マラソン」の直前会見が16日、都内ホテルで行われ、アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずき(シスメックス)、マラソン前日本記録保持者の渋井陽子(三井住友海上)、今年のロッテルダム・マラソン優勝の大南博美(トヨタ車体)ら出場を予定している有力選手が、大会への意気込みを語った。
(写真:健闘を誓う(左から)渋井、野口、大南)
 今夏の大阪世界選手権の女子マラソンで土佐礼子(三井住友海上)が銅メダルを獲得し、北京五輪の代表に内定した。残り2枚の代表切符をかけ、今回の東京、来年1月の大阪、同3月の名古屋の3レースで熾烈な戦いが繰り広げられることとなる。
 東京には野口、渋井、大南のほか、昨年大会で終盤に追い上げ2位に食い込んだ尾崎朱美(セカンドウィンドAC)、海外勢では06年ベルリンマラソン2位のサリナ・コスゲイ(ケニア)、04年大会を制したブルーナ・ジェノベーゼ(イタリア)らが出場する。

(写真:2年ぶりのマラソン参戦となる野口)
 アテネ五輪の翌年、ベルリンマラソンで2時間19分12秒の日本記録を樹立して以来、約2年ぶりのマラソンレースとなる野口は「久しぶりのマラソン。2年、よく我慢したという感じ。久しぶりに爆発できそう。出場する選手もハイレベルなメンバーで、不安よりもワクワクする気持ちが大きい」と笑顔でコメント。
 この2年、相次ぐ故障などでマラソンのスタートラインには立てずにいたが、今年5月の仙台国際ハーフを1時間8分54秒、7月の札幌国際ハーフを1時間8分22秒でそれぞれ制するなど、強さは健在だ。8月半ばからのスイス・サンモリッッツでの合宿では約1ヵ月間、山道を主体とした走り込みを行い、走行距離は1200キロにも及んだという。
「04年アテネ五輪、05年ベルリンマラソン前と同じくらいの練習はできた。調子もベルリンの前に近い。この1週間、早く走りたくて仕方がない。今回の東京は北京の選考レース。もちろんそれも大事だが、この東京で勝ちたいという気持ちでいっぱい。積極的に走るのは私のスタイル。いつもどおり平常心で臨みたい」と力強く語った。
 
 2時間19分41秒(04年ベルリンマラソン)という野口に次ぐ日本歴代2位の記録を持つ渋井の走りにも注目だ。国内の五輪・世界選手権選考レースでは、積極的な走りを見せながらも終盤に失速することが多い。今大会に向けては「40キロ走をたくさんやった」と語り、「国内ではまだ自分の力を出し切るレースができていない。とにかく力を出し切って自分らしいレースができれば、結果はついてくると思う」と意気込む。“はまれば”強さを発揮する渋井。好調が伝えられ、渋井を指導する鈴木秀夫監督も「野口との対決が面白くなってきた」と太鼓判を押すほどの仕上がりだけに、どんな走りを見せてくれるのか楽しみだ。
 
 野口と渋井の対決に注目が集まっているが、今年のロッテルダム・マラソンを制した大南、06年ベルリンマラソン2位のコスゲイ、04年大会を制したジェノベーゼらも上位を伺う。「ロッテルダムで優勝して北京の選考会につなげたいと思っていたので、自信を持って臨める。練習どおりに走ることができれば今までのレース以上の走りができると思う。自分のリズムを崩さないようにゴールまで走り切りたい」(大南)、「コンディションはとても良い。天候さえよければ良い走りができると思う」(コスゲイ)、「今回の目標は自己ベスト(2時間25分28秒)の更新。さらにもう一度優勝したい」(ジェノベーゼ)とそれぞれ意気込みを語った。

 難コースと言われる東京は、後半30キロ過ぎからの上り坂が勝負どころとなりそうだ。当日の気候、コンディションにもよるが、野口、渋井、さらには大南ともに積極的なレース運びが持ち味であるだけに、スローペースの展開になることは考えにくい。山口衛里(天満屋)が持つ2時間22分12秒(99年)の大会記録更新の可能性も十分あるだろう。
 野口、渋井という初の日本人19分台ランナー同士の対決。ここに他の選手がどう挑むのか。北京五輪切符をかけたハイレベルな戦いから目が離せない。


2007 東京国際女子マラソン
11月18日(日)12時10分スタート(国立競技場〜大森海岸交番前折り返し)

<主な招待選手と自己最高記録>
野口みずき(シスメックス) 2時間19分12秒
渋井陽子(三井住友海上) 2時間19分41秒
大南博美(トヨタ車体) 2時間23分26秒
サリナ・コスゲイ(ケニア) 2時間23秒22
ジビレ・バルシュナイテ(リトアニア) 2時間25分15秒
ブルーナ・ジェノベーゼ(イタリア) 2時間25分28秒
尾崎朱美(セカンドウィンドAC) 2時間28分51秒