東洋大学硬式野球部。所属する東都大学リーグでは無類の強さを誇り、多くのプロ野球選手を輩出してきた名門校だ。近年では2006年・永井怜(東北楽天)、07年・大場翔太(福岡ソフトバンク)など、エースがドラフトで上位指名され、“投手の宝庫”としても注目されている。そして今年もまた、同大から優秀なピッチャーがプロの世界へと羽ばたいた。乾真大。最速146キロのストレートと大学で磨きをかけたスライダーを武器とするサウスポーだ。高校、大学とエースとして活躍してきた乾だが、大学入学直後には大きな壁にぶつかった。果たしてその壁とは何だったのか。
―― ドラフトで指名を受けたときの瞬間は?
: 寮の応接間でチームメイトと一緒にテレビを観ていたのですが、自分の名前を呼ばれた瞬間はなんだか不思議な感じがしました。自信は「かかればいいな」というくらい。というのも、4年生になって苦しいシーズンを送ってきていたので。

―― 「苦しいシーズン」とは?
: 4年生になる際、「今年1年で人生が変わる」と思っていたので、結果を出したいという気持ちが強かったんです。それで3年生の時にコントロールが安定していなかったので、それを修正しようとしたところ、変化球でかわすピッチングになってしまった。そしたらフォームが小さくなって、ストレートの威力がなくなったんです。

―― それでも3位指名された。評価されたと思う点は?
: サウスポーということと、スライダーには自信があって、結構三振を取れていたので、そこを評価していただいたと思っています。

―― これまでに最も印象に残っている試合は?
: 大学1年の時のリーグ戦初登板の試合です。1球もストライクが入らずに四球を出して、わずか4球で降板したんです。オープン戦ではいつも通りに投げられていたのに、リーグ戦になって急に緊張して、自分が何をしたらいいのかわからなくなった。高校時代、甲子園でさえも緊張することなんてなかったのに……。今考えると、「今の自分の実力では打たれるんじゃないか」という不安があったんだと思います。でも、その四球があったからこそ、「このままでは自分の大学野球が終わってしまう」と危機感をもって練習に励むことができました。それまではがむしゃらに練習していたのですが、先輩のプレーを参考にしたりして、いろいろと考えるようになったことも大きかったですね。

 ピッチングのカギは真っ直ぐにあり

 普段から鏡があると、無意識にフォームをチェックしてしまうという乾。プロとしての素質はそんなところからも窺える。高校では甲子園に出場し、大学では日本代表として国際大会経験も豊富だ。しかし、今後はこれまで以上に厳しい競争が待っている。プロで生き抜くためには何が必要なのか。そして1年目の目標とは。

―― 生命線となるものは?
: 右バッターのインコース、左バッターのアウトコースへのクロスファイヤーの真っ直ぐです。そこをしっかりと投げることができれば、変化球も生きてくると思うので、カギになってくると思います。

―― 今後の課題は?
: ストレートを磨くことですね。球速というよりも、球持ちをよくしてキレを出したいなと。変化球には自信がありますが、それだけではプロでは通用しないので。それと落ちる系のボールを習得したいなと思っています。

―― メンタル面では?
: ピンチの時、結構イライラしてしまうんです。特に調子が悪い時には表情には出ないのですが、頭に血がのぼって冷静ではいられなくなる。調子が良かろうが悪かろうが、いつも淡々と投げられるようにメンタルを強化していかなければいけないと思っています。

―― 1年目の目標は?
: まずは一軍で1勝すること。そこからまたどんどん積み重ねていくことができればと思っています。

―― ファンへのアピールポイントは?
: 体は小さくて細いですけど、バッターに向かって果敢に投げている姿を見てもらいたいです。投げたボールや、マウンド上でのしぐさなどに気持ちが表れると思いますので、そこを注目してほしいです。

 4年前、「卒業後はプロに行くぞ」という気持ちで大学生活をスタートさせた乾。175センチと体格的には決して恵まれているとは言えない彼だが、4年間、ひたすら努力をし続けてきた結果、子どもの頃から憧れてきたプロへの世界へと一歩、足を踏み入れた。しかし、本当の勝負はこれからだ。自分よりも上背のあるプロの強打者たちを、彼がどんなふうに打ち取るのか。北海道日本ハムのルーキーは斎藤佑樹だけではないということを、マウンドで示してほしい。

乾真大(いぬい・まさひろ)プロフィール>
1988年12月8日、兵庫県生まれ。東洋大姫路高では1年夏からベンチ入り。3年夏にはエースとして甲子園に出場し、8強入りを果たした。東洋大では5度のリーグ優勝に貢献。2年時からは日本代表にも選出されている。最速146キロのストレートとキレの鋭いスライダーが武器。175センチ、74キロ。左投左打。


(聞き手・斎藤寿子)

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