缶コーヒーブランド「ジョージア」は、2010シーズンよりプロ野球12球団と提携、さらにNPBパートナー契約を締結し、“チームの勝利のために貢献した素晴らしいプレー”に贈られる「ジョージア魂」賞を創設しています。「ジョージア ベースボールパーク」のサイトでは、二宮清純の書き下ろしコラム「野球探偵007」のコーナーをオフシーズンも月2回更新中。過去の受賞プレーはもちろん、惜しくも受賞を逃したノミネートプレーの中から二宮があらためて取り上げたいものを題材にコラムを執筆しています。

(写真:今季より地元・九州でのプレーを選んだ内川)
 当サイトでは今回、昨シーズンの第5回「ジョージア魂」賞にノミネートされ、今季は福岡ソフトバンクでプレーする内川聖一外野手のコラムを特別に紹介します。

 福岡ソフトバンク・内川聖一「両リーグ首位打者の条件」

 セ・パ2リーグ制になって、今季で62シーズン目になるが、両リーグで首位打者に輝いた選手は江藤慎一(1964、65年=中日、71年=ロッテ)ひとりしかいない。
 今季、江藤に続く2人目の偉業に挑戦するのが横浜から福岡ソフトバンクにFA移籍した内川聖一である。周知のように内川は横浜時代の08年、右打者最高打率の3割7分8厘で首位打者を獲った。

 内川が打撃開眼したきっかけはこの年、横浜へやってきた杉村繁打撃コーチの一言だ。
「それがオマエにとって一番脆いかたちだよ」
 杉村は東京ヤクルトのコーチ時代、相手ベンチから内川のバッティングをしっかりチェックしていたのだ。

 杉村が指摘した「脆いかたち」とは、どういう状態を指すのか。かつて本人はこう語った。
「もともと、僕は詰まるのがイヤだったんです。バッターとして“詰まるのは負けだ”という感覚があり、自分の体より前でボールをさばいていました。
 しかし、これだと必然的にピッチャーが投げるボールを見る時間が短くなる。打つまでの距離もまた短くなります。ボールの種類を早く判断しなければならないわけだから変化球に泳がされたり、コンと当てるだけのバッティングが多くなっていたんです。それでもバットに当たること自体、僕の長所だと錯覚していました。
 ところが杉村さんに指摘されてショックを受けた。バッティングに関しては小学校の頃から“誰にも文句は言わせないぞ”という気持ちでやってきましたし、欠点を言われたこともなかったものですから……」

 杉村のアドバイスを受けた内川はポイントを後ろの足のほうに「ボール1個分」くらい下げた。これが功を奏した。打球は少々詰まっても90度のフェアグラウンドの中に飛ぶようになり、打率も上がった。

 パ・リーグの球場はセ・リーグの球場に比べて総じて広い。とりわけ本拠地のヤフードームは広い上にフェンスも高い。今季からは公式球が「飛ばないボール」に統一される。
 移籍先で首脳陣から信頼を得るには春先から結果を出すしかない。クレバーな内川はホームランを捨て、ヒット狙いに徹するのではないか。現に彼は目標をマット・マートン(阪神)のシーズン最多安打記録(214本)更新に定めている。自分の長所を最大限いかすことでチームに貢献しようと考えているはずだ。

 昨年6月1日の埼玉西武戦では、石井一久のフォークにうまく食らいついてタイムリー3塁打を放ち、「ジョージア魂」賞にノミネートされた。このように、ことヒットを打つことに関しては、内川は日本球界屈指のテクニシャンである。両リーグにまたがるリーディングヒッターとなるのも不可能ではないはずだ。

「ジョージア ベースボールパーク」のサイトでは、昨シーズン、「ジョージア魂」賞にノミネートされた埼玉西武・中村剛也内野手についても二宮清純の書き下ろしコラムを掲載中!

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