NPBもアイランドリーグも各球団が2月1日に新チームを始動してから、3週間が経過した。今シーズン、リーグからは過去最多タイの6名が新たにNPBの門をくぐり、計19選手が1軍で活躍するべくキャンプを過ごしている。彼らの動向もリーグの行方ともに、ファンは気になるところだ。NPB入りというひとつの夢を叶えた選手たちは、新たなシーズンにどのように臨もうとしているのか? その今を追いかけた。
 3度目の正直で1軍マウンドへ――梶本達哉

 1軍昇格のチャンスが巡ってきたのは暑い8月のことだ。梶本はブルペンでデビュー登板に向け、準備をしていた。しかし、背番号99は1軍のマウンドに上がることなく、5日後に出場選手登録を抹消された。1軍に上がったのは、一昨年5月に続いて2度目である。最初の1軍も登板はなく、雰囲気を味わっただけに終わった。
「まぁ、もう慣れましたね。慣れたらアカンのですけど」
 自虐的にポツリとつぶやいた。

 2軍では着実に結果を残している。17試合に登板して7勝(3敗)をあげ、ウエスタンリーグの最多勝に輝いた。防御率もシーズン終盤まで2点台だった(最終的には3.22)。
「大崩れしなくなりましたね。以前ならバタバタと点を獲られていたのを、1点で粘れるようになりました」

 秋には若手のNPB選手で構成されたIBAFインターコンチネンタルカップの日本代表に選ばれた。チームでは唯一の選出だった。阿波野秀幸投手コーチからは加賀繁(横浜)、大場翔太(福岡ソフトバンク)らとともに先発要員として期待されていた。ところがアクシデントが起きる。大会が開催される台湾に渡ってから、練習中に腰を痛めてしまったのだ。なんとか試合に出られるように治療を試みたものの、出場は中継ぎによる1試合のみにとどまった。
 
 NPB入りして身につけた武器のフォークは「コツがつかめてきた」と語る。単にストンと落として空振りを奪うだけでなく、握りによって、チェンジアップ気味にカウントを整えたり、少し落としてゴロを打たせたりとバリエーションがつけられるようになってきた。またカーブも習得し、緩急をつけることで投球の幅は広がった。
「まだまだ曲がりは悪いですけど、カーブを持っているだけでも違いますからね」
 
 160キロのスピードボールを投げたい――NPBでもしばらくは、そんな目標を掲げていた。ただ、4年目を迎えた今、心境は変わりつつある。
「もちろん速いボールは投げたいですよ。でも、その前に結果を出さないといけない」
 今季は昨季以上に調子の波を減らし、安定した成績を残すこと。そして、その先の1軍昇格を見据えている。

 ひとつアドバンテージになるのは、インターコンチネンタルカップでの経験だ。実はこの大会で使われていたボールが、今季から12球団統一で導入される低反発球そのものだったのだ。
「最初は表面が滑るなと思っていましたけど、投げていくうちに慣れましたね」

 梶本と同じ1986年生まれにはダルビッシュ有(北海道日本ハム)、涌井秀章(埼玉西武)といった日本を代表する右腕もいる。もうNPBの世界では若手とは言っていられない年齢になってきた。
「まずは、とにかく1軍で投げること。そこから次の目標を考えていきたいですね」
 3度目の正直という言葉もある。今度こそ昇格の機会は逃さない。