日本ラグビーの2010−2011シーズンはサントリーの9年ぶり4度目の日本選手権優勝(2月27日)で幕を閉じた。4連覇を目指していた三洋電気との決勝戦、サントリーに流れを引き寄せる逆転トライを決めたのはWTB小野澤宏時だ。小野澤といえば代名詞の“うなぎステップ”だ。うなぎのようにニョロッと抜け出し、キレのあるステップでボールをインゴールへと運ぶ。その“うなぎステップ”の極意について当サイト編集長・二宮清純が訊いた。
二宮: 今回の日本選手権でも“うなぎステップ”が光りましたね。このステップは小野澤さんの中では既に完成の域に達しているものなんですか?
小野澤: いえいえ、まだ完成はされていません。質のいい筋肉量が増えれば、もっと強いステップが踏めると思っています。そうなれば、もっと違う世界が見えてくるんじゃないかと。そのために、ここ7年くらいはクリーンを使ったトレーニングを重視してやっています。

二宮: 今現在の筋肉量や質は、これまでの中でも最高レベルに達していると?
小野澤: そうですね。僕はベスト体重というものがないので、年々、少しずつ体重も増えていますし、その分、筋肉の強度も上がってきています。

二宮: “うなぎステップ”には強さに加えてスピードも重要ですよね。よく俊足の選手に対して「50メートル5秒8」などという言い方をしますが、ラグビーでは直線を50メートルも走ることは稀です。それよりも抜く時の一瞬のスピードがもっと大事になるのでは?
小野澤: そうですね。抜く時のスピードは非常に大事です。あとは止まることができるかどうか。全力で走っている中で、バチンと止まり、その後一歩で方向を変えることができれば、相手を抜くことができる。ですから、ラグビーでは止まることができるのも足の速さのうちに入ると考えています。

二宮: 止まるコツはあるんですか?
小野澤: 地面をどううまく踏めるかにかかってくると思っています。ドロドロのグラウンドで止まろうとすると、体が流れていってしまって、前に滑っていってしまうんです。ですから、真上にムダなく地面を踏むことが大事になってくる。そうすれば、体全体が一本の軸になってブレることなく止まることができます。あとは一歩でどの方向にもステップを踏むことができますからね。

二宮: 現在33歳ですが、何歳まで現役生活を続けたいという具体的な目標は?
小野澤: いつまで続けるかは正直、わからないですね。とりあえずこの4年間は今年のW杯を目標にやってきましたので。その後は1年、1年かなと思っています。

二宮: 現役引退後、おやりになりたいことは?
小野澤: 地元の静岡に戻って、ジュニア世代の普及・育成に携わりたいなと考えています。できれば、どこか1校だけを見るのではなくて、例えば大学での仕事をベースにしながら、静岡県内のジュニア世代を広く見たいですね。

<本日発売の『ビッグコミックオリジナル』(小学館2011年6月5日号)に小野澤選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください。>