野球の斎藤佑樹、田中将大、サッカーの香川真司、卓球の福原愛……スポーツ界のスターを数多く輩出している1988年度生まれ。それはボウリング界も例外ではない。22歳の川添奨太だ。昨年、プロデビューを果たし、いきなり賞金王に輝いた。11月のジャパンオープンの決勝では2ゲーム連続のパーフェクトで優勝。これは世界初の快挙だった。丸々とした体型から“ぽっちゃり王子”のニックネームもある天才ボーラーを二宮清純が訪ねた。
(写真:多い時は1日500球は投げるという右腕は左腕の倍近く太い)
二宮: 川添選手は9歳の時、生まれて初めてやったボウリングで、164のスコアを出したとか。驚きです。やはり、それだけ生まれ持った素質があったんですね。
川添: いや、それが、まぐれだったんです(笑)。以降、何回やっても百点すら出せなくなってしまって……。それが悔しくてボウリングにのめり込んでいったんです。

二宮: プロになろうと意識したのは?
川添: 小学四年生のころです。当時、『ザ・スターボウリング』というテレビ番組を見ていて、「自分もああいうストライクを投げたいな」と憧れました。それに僕の通っていたボウリング場にプロボウラーの方がいて、その存在も大きかったですね。

二宮: まわりの友達がプロ野球選手やJリーガーになりたいと言っていた時に、「僕はプロボウラーになる」と夢見ていたわけですね?
川添: そうですね。ボウリングは野球やサッカーに比べて競技としてマイナーなので、大会で成績を残し、学校集会などで表彰されても、周りの人は“えっ、ボウリング?”といった反応でしたね(笑)。

二宮: ボウリングはレーンのコンディションを踏まえて、ボールの回転やピンに当てる角度を計算しながら投げる必要がある。奥が深いスポーツですね。
川添: だから、やればやるほど面白くなるんです。ボウリングはある程度練習すれば、男性だと190、女性だと170〜180のスコアまでは案外すぐに出せるようになる。ただ、そこから先が難しい。

二宮: 早くも日本の頂点に立って、この先の夢は?
川添: ボウリングの本場アメリカのツアーで優勝することです。アメリカでは賞金ひとつとっても、大きい大会だと優勝すれば2500万円もらえるもののもあります。トーナメントの数も年間約20本ありますからね。ひとまず、今年2月に参加したUSオープンに、来年もう一度参加し、それから具体的に米国進出も視野に入れたいと考えています。

二宮: アメリカのボウリング場のレーンコンディションは、日本とはかなり違うとか。
川添: オイルのひき方が全然違います。日本はボウリング人口を増やしたいということで、比較的ラクにスコアが出せるコンディションにしています。ガーター寄りの部分には、オイルがほとんどひかれていないので、多少、ボールが外に出すぎても、回転していれば曲がって中央に戻ってきやすいんです。
 ところがアメリカでは、全面にオイルがひいてあるので真ん中からそれやすい。日本ではある程度のコントロールがあれば、だいたいストライクを取れますが、アメリカではより正確なコントロールが求められます。
(写真:川添選手が拠点にしている山口県・小郡スーパーボウルにて)

二宮: これまでアメリカの大会で優勝した日本人はいません。前人未到の領域に挑戦するわけですが、海外で勝つための課題は?
川添: いっぱいあります。まずはアメリカ人のように強い球を投げたいですね。そして、アメリカのレーンに対応するための力と経験値をつけていきたいです。

<7月1日発売の『第三文明』2011年8月号では、さらに詳しいインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>