ボクシングのWBAスーパーバンタム級タイトルマッチが9日(日本時間10日)、米国ニュージャージー州のアトランティックシティで行われ、王者の下田昭文(帝拳)は同級1位のリコ・ラモスに7R2分46秒KO負けを喫し、初防衛に失敗した。下田は今年1月に同タイトルを獲得。日本人初となる米本土での防衛戦に臨んだが、ベルトを守れなかった。この結果、現役の日本人世界王者は5人に減った。
 痛恨の被弾だった。7R、挑戦者の左フックをアゴにもらった。19戦無敗のラモス、最大の武器だ。王者はキャンバスに倒れ、何とか立ち上がろうとするが立てない。最後はレフェリーが抱きかかえて試合を止められた。

 立ち上がりは悪くなかった。スピードを生かして、右ジャブから左ボディとパンチを繰り出した。ラモスは下田が踏み込んできたところに合わせようとするが、王者はうまく対処し、主導権を握らせない。4Rにはラモスが出てきたところへ左カウンター。これはうまくヒットしなかったものの、試合は王者のペースだった。

 潮目が変わったのは5Rあたりから。それまで下田のスピードを警戒して、下がり気味だったラモスが積極的に前へ出始める。接近戦に王者は左ボディで相手の出足を止めようとするものの、ローブローの注意を何度か受け、攻め込まれる場面も増えてきた。6Rにはロープ際に詰めて、連打を放ったが、なかなか有効打が奪えない。

 そして7R、ラモスの右ストレートを浴び、下田の足が止まる。「僕は足が命」と語っていた王者の持ち味が消えると、挑戦者はそれを見逃さなかった。ワンツーで攻勢を仕掛け、最後は左フックを一閃。一撃で勝負を決められた。

「危険と言われるくらいの相手がちょうどいい」
 そう言って、敢えて選んだ敵地での手強い挑戦者との防衛戦。試合は全米で生中継されており、下田にとっては絶好のアピールの機会だった。
「すべてをボクシングに賭けて、天命を待つ」
 大一番にかける思いは並々ならぬものがあった。だが、結果は無念の王座陥落。ボクシングの本場で自らの名をとどろかせる夢は振り出しに戻った。