柔道の世界選手権が24日、フランス・パリで2日目を迎え、この日実施された3階級すべてで日本勢が金メダルを獲得した。男子73キロ級では中矢力(東海大)が前回覇者の秋本啓之(了徳寺学園職)を準決勝で撃破。その勢いで決勝も優勢勝ちし、初優勝を収めた。女子52キロ級では中村美里(三井住友海上)が、決勝で2年連続となる西田優香(了徳寺学園職)との対決を制し、2年ぶりのV奪還。同57キロ級では佐藤愛子(了徳寺学園職)が連覇を狙った松本薫(フォーリーフジャパン)を準決勝で下し、決勝も一本勝ちして初の金メダルに輝いた。
 五輪の代表入りへ大きくアピールする優勝だ。大学4年生、22歳の中矢がついに世界の頂点に立った。秋本との顔合わせとなった準決勝、過去2戦2敗の第一人者をいかに倒すかが最大のポイントだった。
「技が速くて、右からでも左からでも担いでくる。足技もうまいし、寝技も強い」
 かつて、そう秋本の印象を語っていた中矢だが、得意の寝技に持ち込み、ペースを掴んだ。さらに「今度は、立ち技で勝負をかけてみたい」と明かしていたように、残り約30秒となったところで大外刈りを仕掛ける。これが見事に決まり、「技あり」を奪った。大きな壁を乗り越えた瞬間だった。

 昨年のグランドスラム東京を制し、一躍、代表戦線に名乗りをあげた。その後も2月のパリ大会、6月のリオデジャネイロ大会とグランドスラムは計3勝。68位だったランキングはどんどん上がり、ついにこの日の優勝で秋本を抜いて2位に浮上した。「さらに4年も経てば、また若手が出てくる。だから自分が一番、若いうちに五輪に出たい」と、照準はあくまでも次のロンドンに定めている。このままの勢いを持続すれば、夢は現実に近づきそうだ。

 女子52キロ級では元女王が現女王に雪辱を果たした。2年連続の決戦は、互いを知り尽くしている者同士だけに序盤から激しい組み手争いが続いた。技をかける展開に至らず、先に指導を受けたのは中村だ。しかし、王座奪還への意地か、今度は中村が相手の組み手を封じ、攻勢を仕掛ける。受け身に回った西田は立て続けに指導をとられ、ポイントに。指導ひとつの差が明暗を分けた。

 昨年の決勝も旗判定決着だったように両者の実力差はまさに紙一重。五輪代表へ向けて、この2人が来春まで激しいデッドヒートを繰り広げることになりそうだ。

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