プロ野球の日本シリーズが24日、福岡・ヤフードームで開幕した。連覇を狙うパ・リーグの福岡ソフトバングが、14年ぶりにセ・リーグを制した東京ヤクルトを4-2で破った。ソフトバンクは4回裏に松田宣浩の先制ソロを含む6連打で3点を先制。6回に明石健志のタイムリーで追加点を挙げる。先発の武田翔太は9回に畠山和洋に2ランを浴び、完封を逃したものの、1人で投げ抜いた。ソフトバンクは武田が4安打完投、打線は先発全員安打と投打でヤクルトを圧倒した。

 

◇第1戦

 主将・内川の不在感じさせぬ完勝(ソフトバンク1勝、ヤフオクドーム)

東京ヤクルト     2 = 000000002

福岡ソフトバンク   4 = 00030100×

勝利投手 武田(1勝0敗)

敗戦投手 石川(0勝1敗)

本塁打  (ヤ)畠山1号2ラン

      (ソ)松田1号ソロ

 

「チームがひとつになった勝利」。ソフトバンクの工藤公康監督は、キャプテンで4番を務め、クライマックスシリーズ(CS)MVPの内川聖一が左肋骨骨折により欠場する非常事態の中で、ヤクルトに勝ち切った。スコア以上に相手を圧倒し、大黒柱の不在を感じさせない完勝に安堵の表情を浮かべた。

 

 ソフトバンクの先発マウンドには、武田が上がる。昨シーズンは第2戦の先発でシリーズの流れを変える好投を見せた。今シーズンは流れをつくる開幕投手を任された。武田は2番・川端慎吾と4番・畠山にヒットを打たれ、2死一、三塁と、初回からいきなりピンチを迎える。だが「WBSC世界野球プレミア12」の侍ジャパン入りを果たした22歳の右腕は、6番・雄平をセカンドゴロに仕留め、窮地を脱してみせた。

 

 工藤監督が「CSとは違って丁寧にピッチングをしてくれた」という武田は140キロ台の直球と縦に大きく割れるカーブを武器に、ヤクルト打線を打ち取っていく。2回はショート今宮健太が小フライを背走しながらジャンピングキャッチ。3回には明石がセンター前へと抜けそうな当たりを好捕し、ダブルプレーを完成させた。二遊間コンビの好守にも助けられ、スコアボードにゼロを並べていった。

 

 一方の打線は、ヤクルト先発の石川雅規に対し、初回から二死満塁のチャンスを作った。ここで6番・中村晃が打席に入ったが、今シーズン得点圏打率3割7分5厘のクラッチヒッターはショートゴロに倒れる。その後も石川の老練なピッチングの前に2、3回と三者凡退に終わっていた。

 

 投手戦の様相を呈してきたが、4回裏にソフトバンク打線が火を噴いた。火付け役となったのは選手会長の一振りだった。「何とか先制点を」と、5番・松田がカウント2-1からの石川のシンカーにうまくバットを合わせた。「納得のいくバッティング」と手応えは十分。松田は両手を広げ、一塁へ駆け出す。打球は左中間スタンドに吸い込まれていった。「一振りでみんなの緊張を楽にしてくれた」と工藤監督が称える一発で、ソフトバンクは先制に成功する。

 

 続く中村はレフトへの技ありのヒット、吉村裕基がサードへの内野安打で一、二塁とする。8番・今宮は1-0からの石川の変化球をセンター前へ弾き返した。二塁走者は三塁を蹴り、追加点が入ると思われたが、ここはセンターの上田剛史がホームへ好返球。キャッチャー中村の好ブロックにも阻まれ、ホームを踏ませてもらえなかった。

 

 好守備に追加点を阻止されたソフトバンクだが、まだ勢いは止まらない。9番・高谷裕亮は完全に打ち取られたが、打球はサードへのボテボテのゴロ。これが内野安打となり、1点を加える。なおも一、二塁で、1番・川島慶三がセンターへ適時打を放った。工藤監督が「つなぐ気持ちを持って打ってくれた」と振り返る6連打で3点のリードを奪う。

 

 援護をもらった武田は、テンポよく5回表を6番からのウラディミール・バレンティン、大引啓次、上田を9球、6回表は中村、比屋根渉、川端を10球で料理した。好投を続ける武田にソフトバンク打線は、明石のタイムリーでさらにリードをプレゼント。武田は8回表に大引に内野安打を許すまで、14者連続アウトに切って取った。危なげないピッチングを見せ、8回終了時点で99球。工藤監督はクローザーのデニス・サファテへのスイッチも考えたが、「どうしても行きたい」と答えた武田に9回も託す。

 

 武田は1アウトから今宮のエラーで出塁を許したが、トリプルスリーを達成するなど今シーズン2冠王の山田哲人をライトフライに打ち取った。畠山には甘く入ったストレートをレフトスタンドへ運ばれたが、雄平はきっちりセカンドゴロに抑え、試合終了まで投げ切った。4安打完投でシリーズ開幕投手の役目を十分果たした。

 

 球団初の連覇へ、好発進となったソフトバンク。過去、初戦を取ったチームの約6割が日本一に輝いている。「ひとつひとつ確実に勝てるように、選手がグラウンドで100パーセントの力を発揮できるように努めたい」と工藤監督。“優勝請負人”は浮かれることなく、地に足をつけて、目の前の1勝を獲りに行く。

 

(文/杉浦泰介)