大商大出身のドラ1ピッチャーと言えば、真っ先に頭に浮かぶのが1977年の新人王・斉藤明雄である。

 

 大洋に入団したその年のキャンプで斉藤は黒いサングラス姿で現れた。新人らしからぬ格好に周囲は大慌てした。ゴーイング・マイウェイ。このふてぶしさこそが斉藤の持ち味だった。

 

 1年目は8勝9敗ながら、そのうちの4勝を巨人からあげた。翌78年には16勝(15敗)をあげ、押しも押されぬエースとなった。

 

 身長184センチ、83キロの斉藤に対し、こちらは身長185センチ、体重82キロと体格は、ほぼ同じである。

 

 カープの今年のドラ1は大商大の岡田明丈。大商大のピッチャーとしては斉藤以来39年ぶりのドラフト1位だ。

 

 この春6勝、この秋にも6勝をあげるなど4年になって本格化した。最速153キロのストレートとフォークボールが持ち味だ。

 

 ユーチューブで岡田のピッチングを確認した。先輩の斉藤が柔なら、岡田は剛の印象だ。真上から投げ下ろす角度のついたボールは、コーナーに決まれば、プロと言えどもそうは打てないだろう。カットボールも悪くない。またフォークボールには落差があり、クローザーでもやれそうだ。

 

 弱点はないのか、ある在京球団のスカウトに話を聞いた。「グラブから右手を抜くのがやや早い。私は全部、球種を言い当てることができました。でも、こういうクセは一週間もあれば是正できます。大きく育てようと思うなら先発ですが、コントロールも悪くないからリリーフもできる。カープは“どこでも使える”点を評価して(ドラフト1位で)獲ったのだと思います」

 

 そう言えば斉藤も先発、リリーフ両面で活躍した。プロでの心得を一度、先輩から聞いた方がいいかもしれない。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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