イタリアは、青だった。フランスはトリコロールで、アルゼンチンは水色と白――先のラグビーW杯において、ほとんどの国はサッカーの代表チームと同じカラーリングのユニホームを身につけていた。

 

 だが、桜をイメージしたラグビーの日本代表と、青を前面に押し出したサッカー日本代表との間には、共通するものがまったくない。さらにいうなら、バレーボールの日本代表、バスケットボールの日本代表も、それぞれまったく違ったユニホームを着ている。善し悪しは別にして、競技ごとにこれほどデザインがバラバラな国は、世界広しといえどもちょっとない。新設されたスポーツ庁の長官にはぜひ考慮していただきたい問題だが、それはこの際、置いておく。

 

 さて、依然として高い注目を集めているラグビーだが、ここのところ、満員にならないスタジアムの問題が注目されている。チケットは前売りで完売しているにもかかわらず、観客席には空席が目立つというケースが続出しているのだ。選手の間から不満の声が出てくるのもわからないではない。

 

 だが、実はこの問題、やる気や努力でどうにかなるものでもないらしい。

 

 先週末、優勝を決めたサンフレッチェの試合には、3万3210人の観客が詰めかけた。もちろん、スタンドはほぼ満員……なのだが、よく聞いてみると数字があわない。前売りで売れたのは3万5000枚。そのほかに、年間チケットを購入している人たちがいる。そうしたファン全員が詰めかけた場合、スタジアムは満員どころか入場できない人が続出する事態になってしまうはずなのだ。

 

 そうならないためには、年間チケット所有者の動向を読まなければならない。来場する割合はどれぐらいか。そこを考えて、前売りの枚数をはじき出す。求められるのは、経験と勘である。

 

 今回、サンフレッチェは観客席にほとんど空席をつくらずにすんだが、過去には、チケット完売にもかかわらず空席が目立つ――という今回のラグビーと同じ苦い経験をしたこともあったという。

 

 そう聞くと、批判されているラグビー協会がいささか気の毒に思えてくる。なにしろ、近年のラグビーは前売りが完売することなどほとんどなかったのだから。

 

 ただ、ラグビーのトップリーグには、Jリーグと母体を同じくするところがいくつかある。にもかかわらず、そうしたチームのスタンドまで空席が目立ったのはどういうことか。

 

 単に読み違えただけ、というのならば仕方ない。だが、身内にノウハウがあるにもかかわらず競技が違うからという理由で知恵を借りなかったというのであれば、いささか残念。競技ごとにユニホームが違う国ならではの弊害である。

 

<この原稿は15年11月26日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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