代打の切り札・小窪哲也が選手会長に就任した。聞けば小窪はPL学園、青山学院大学でもキャプテンを務めてきたとのこと。強豪校でのキャプテンはリーダーシップのある証拠だろう。

 

 今季は代打を中心に69試合に出場し、打率2割9分6厘、15打点の好成績を残した。ここ一番での勝負強さは、相手にとっては脅威だろう。

 

 小窪の打席からは「何とかくらいついていこう」という必死さがひしひしと伝わってくる。バッティングの基本通りにセンターに打ち返す技術はカープの中でも屈指である。

 

 PL学園出身の代打と言えば、カープでは西田真二の顔が思い浮かぶ。右と左の違いはあるが、思い切りの良さとバットコントロールの巧さは、両者に共通している。

 

 4打席で1本ヒットを打てば、そこそこの打率を保てるレギュラーと違って、代打はたった1打席のみの勝負となる。ミスショットは許されない。

 

 かつて代打ホームランの「世界記録」をつくった高井保弘(元阪急)に「代打とは?」と聞いたことがある。

 

 返ってきた言葉は「一振りで嫁と子供にメシをくわせることよ」。これほど代打稼業の本質を表した言葉は他にあるまい。

 

 小窪は「チーム一丸となって25年ぶりの優勝に向かって頑張っていきたい」と語っている。一振りでチームを勝利に導けば、いやが上にも選手たちの士気は上がる。来季、1991年以来のリーグ制覇を目指すカープにとっては悪くない人事である。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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