「広島のみなさん、おめでとうございます!」

 

 サンフレッチェ広島が年間チャンピオンに輝いた12月5日のガンバ大阪戦の試合後、優勝インタビューで森保一監督が絶叫した言葉である。

 

 いまのカープファンの気持ちも同じではないだろうか。なんたって、黒田博樹の来季の現役続行が決まったのだから。

 

 前田健太のメジャー移籍が確実視される中、黒田が引退すれば、単純計算して今季の勝ち星のうち26勝が消えてなくなることになる。もう一度、黒田を見たいという純粋な気持ちと、これで10勝は計算できるという打算と、ふたつながら我にあり!

 

 それにしても、我ながら浅はかな人間だと猛省したい。今季の開幕前、本気で優勝も可能だと考えていた。前田、黒田、クリス・ジョンソン、大瀬良大地。この4本柱で50勝くらい計算できるのではないか、と。おまけに今年は福井優也もよさそうだし。

 

 現実は、3年ぶりのBクラス転落。前田も黒田もジョンソンも二ケタ勝ったし、福井だって9勝したのに。予想外に打てなかったし、緒方孝市新監督の力量も見誤った、としか言いようがない。

 

 いずれにせよ、マエケンの15勝分は消えるわけだし、常識的に考えたら、来季はとうてい強気な予想はできない。でも、春先の、今年は上位に行けるのでは、という常識的な予想もはずれたのだから、来季は苦しいだろうという常識も当たるとは限らない。

 

 現在、希望の星は、石井琢朗一軍打撃コーチである。肩書に注目してほしい。今季までの一軍守備走塁コーチから、一軍打撃コーチに転任した。この人事は、スマッシュヒットだ。

 

 秋季キャンプの最大の目玉も石井コーチの一挙手一投足だった。ボールにマジックで文字を書いてトスして、読みとらせる、なんて練習まで考案したという。(打者のボールを見る目を養おうということでしょうね、きっと)。

 

「打てなくなった時に、打つだけになってしまう」(デイリースポーツOnline10月25日)という発言が面白い。

 

 今季のカープの敗因は、明らかに貧打にある。チャンスは作っても、点を取れない。何度、完封負けをしたことか(なんと17試合もあった)。

 

 その点、石井コーチは現役時代、明らかに意識的に四球を取りに行っている打席があった。「打つだけ」ではないのだ。状況に応じて、あるいは打てないと見たら、四球を取る。これは技術である。打てないときに、ただ打とうとして凡退するだけでは、得点には結びつかない。この「石井改革」が実現すれば、来季の得点力は上がるにちがいない。

 

 堂林翔太に、かの落合博満ばりの“神主打法”にとり組ませていることにも注目したい。堂林も、変わるとしたら今しかないですからね。新コーチの果敢な挑戦というべきだ。

 

 来季は打って勝って、大方の予想を覆すことを願いましょう。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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