(写真:序盤にテイクダウンを奪うと、一方的な勝利を収めた青木)
新しい格闘技イベント「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX」が29日、さいたまスーパーアリーナで行われた。メインイベントでは青木真也が、4年ぶりに総合格闘技のリングに立った桜庭和志へ試合冒頭からマウントポジションで連打を浴びせ、1RTKO勝ちを収めた。ヘビー級トーナメント1回戦では北京五輪柔道金メダリストの石井慧が、ジーリー・プロハースカの右ストレートを被弾して1RKO負け。スペシャルワンマッチとして実施された所英男と才賀紀左衛門の一戦は、所がアームバーを極めて一本勝ちした。
再び、日本に総合格闘技の陽は昇るのか。PRIDEの流れを汲むRIZINが挑む。その旗揚げ戦はかつてPRIDEを沸かせた懐かしい顔が揃った。
第1試合は高阪剛だ。2006年5月のPRIDE以来、10年近く現役からは離れていたが、45歳で電撃復帰を果たした。対戦相手のジェームス・トンプソンはPRIDE、DREAMなど日本のリングでもお馴染みの巨漢ファイターである。2メートル近い長身に体重132キロと岩の巨大なトンプソン。体躯を生かした突進で、高阪に襲い掛かる。ラグビー日本代表のスポットコーチとして、闘う姿勢をジャパンに植え付けた高阪。南アフリカの巨兵をなぎ倒したジャパンのように恐れず真っ向勝負で挑んだ。
殴り合いで応戦しつつ、3分50秒には投げでテイクダウンを奪う。9歳下のイギリス人をパウンドで追い込んだ。1ラウンドはトンプソンを消耗させることに成功。2ラウンド早々にマウスピースを落とすほど、息を切らしていた。高阪は1分40秒にカウンターの右フックでグラつかせると、そこから一気の猛攻をかける。トンプソンが戦意を喪失し、レフェリーが試合を止めた。
メインイベントは青木vs.桜庭。新旧日本人エース対決と謳われた試合は一方的なものとなった。現役バリバリの32歳の青木、4年ぶりの総合格闘技となる46歳の桜庭。その差は歴然だった。開始早々にタックルでテイクダウンを奪った青木が、サイドポジションをとる。打撃を交えながらマウントに移行すると、顔面や頭部を殴り続けた。
桜庭はガードをしながら返そうと試みるが、窮地からは脱せない。グラウンドテクニックにも秀でる青木からは逃れられず、雨あられのように飛んでくるパンチ。5分が過ぎたところでリングは桜庭の血で赤く染まる。会場からは桜庭コールが飛んだが、青木のパンチは止まず、セコンドからタオルが投げ入れられ、5分56秒TKOで試合は決した。
憧れの桜庭に圧勝した青木は、「来年、このリングで来年、青木対五味やんないとダメだよな」と観客に呼び掛けながら、マイクでアピール。UFCの五味隆典との対戦を要求し、会場を大いに盛り上げた。海外で活躍する日本人トップファイター同士の対決が実現すれば、今後の起爆剤になる可能性は高い。
大会の目玉であるヘビー級トーナメント。唯一の日本人出場者・石井はKO負けを喫した。1分30秒にトリッキーなハイキックでバランスを崩すと、右フックをガードの上からもらいリング上に倒される。すかさずプロハースカがヒザ蹴りでトドメを刺しにきた。頭部を襲う危険なキックにたまらずレフェリーストップ。北京五輪柔道金メダリストは起き上がることはできなかった。
そのほか日本でもお馴染みのモー、ロシアからの刺客・ネムコフらがKO勝ちでベスト4に進出した。初代王者の座をかけて31日に準決勝、決勝を行う。RIZINの旗揚げ戦は1万人以上の観衆を集め、全14試合中判定決着は1試合のみとエキサイティングな試合を繰り広げた。総合格闘技人気に火をつける起爆剤となれるか。大晦日の興行を含め、今後のマッチメークや試合内容がカギを握る。
各試合の結果は以下の通り。
<第1試合> ※スペシャルワンマッチ
◯高阪剛
2R1分58秒TKO
×ジェームス・トンプソン
<第2試合> ※スペシャルワンマッチ
◯キリル・シデルニコフ
1R2分23秒TKO
×カルロス・トヨタ
<第3試合> ※スペシャルワンマッチ
△元谷友貴
無効試合(エフラインの勝利も体重超過のため)
△フェリペ・エフライン
<第4試合> ※K-1ルールワンマッチ
◯HIROYA
3R1分20秒KO
×西浦“ウィッキー”聡生
<第5試合> ※MIXルールワンマッチ
◯日菜太
1R2分14秒TKO
×宮田和幸
<第6試合> ※スペシャルワンマッチ
◯アナトリー・トコフ
1R55秒KO
×A.J.マシューズ
<第7試合> ※スペシャルワンマッチ
◯所英男
1R5分16秒アームバー
×才賀紀左衛門
<第8試合> ※スペシャルワンマッチ
◯高谷裕之
3R判定3-0
×DJ.taiki
<第9試合> ※ヘビー級トーナメントリザーブマッチ
◯ワレンティン・モルダフスキー
1R2分20秒リアネイキッドチョーク
×内田雄大
<第10試合> ※ヘビー級トーナメント1回戦
◯キング・モー
1R9分9秒KO
×ブレッド・マクダーミット
<第11試合> ※ヘビー級トーナメント1回戦
◯デオドラス・オークストリス
1R3分32秒KO
×ブルーノ・カッペローザ
<第12試合> ※ヘビー級トーナメント1回戦
◯ワジム・ネムコフ
1R2分58秒TKO
×ゴラン・レリッジ
(写真:屈辱の失神KOで初戦敗退の石井<右>)
<第13試合> ※ヘビー級トーナメント1回戦
◯ジーリー・プロハースカ
1R1分36秒TKO
×石井慧
<メインイベント> ※スペシャルワンマッチ
◯青木真也
1R5分56秒TKO
×桜庭和志
(写真/真崎貴夫)