98年からスポニチで仕事をさせていただいているが、大晦日に載るコラムとなると、ちょっと書いた記憶がない。いい機会なので、今年一年を振り返ってみよう。

 

 代表に関して言えば、かつてないほど失望させられることの多い一年だった。

 

 ザッケローニからアギーレへ、スムーズに渡ったはずのバトンは年明け早々に持ち主の手を離れた。後任として呼び寄せられたハリルホジッチは、就任直後こそ無難な立ち上がりを見せたものの、W杯予選初戦のシンガポールと引き分けたことで迷走状態に入った。

 

 あの試合は、新監督にとって初めてとなるアジアでの真剣勝負だった。その試合で勝ち点を落としたことで、ハリルホジッチにとってのアジアは、日本人にとってのアジアより、はるかに危険で、はるかに強大な存在として刷り込まれてしまった。

 

 以降、チーム作りの方向は変わった。アギーレまでは、チャンスの数を増やすことが得点力不足解消の最良の手段とされていたが、ハリルホジッチはより直接的な解決策を求めるようになった。

 

 察するに、彼に方向舵を切らせた要因の一つには、宇佐美の存在があったように思う。夏までの彼は明らかに別次元の点取り屋だったからである。ところが、シーズン中盤あたりからは突如としてゴール運から見放されてしまい、結果、ハリルホジッチのチーム作りにも誤算が生まれた。それは、チャンスの数ではなく、決定力で勝負するチームが陥りがちの罠でもあった。

 

 かくして、シリアが1試合で6点を奪ったカンボジアから、日本は2試合で5点しか奪えない、という情けない有さまとなった。とはいえ、たった1試合で狂った歯車なら、たった1試合で元に戻る、あるいはより良くなることもあるはず。来年は見ていてストレスのない日本代表を期待したい。

 

 続いてJリーグについて。

 

 すっかり定着していた1シーズン制を変えたことへの不満は、シーズンの終盤になってもファンの間にくすぶっていた。だが、賛ではなくて否の声をあげた人をもうならせる試合を、浦和、G大阪、広島の選手はやってのけた。

 

 長くJリーグを見てきた方の中にはそれでも受け入れがたいと考える人もいるだろうが、半面、新たなファンを引き込むことのできる試合でもあった。もし肝心の試合内容がお寒いものだったとしたら――方式の変更は改悪だったと叫ぶ声は、危機的レベルにまで高まっていたかもしれぬ。Jリーグは、現場に救われた。

 

 最後に、今年一年のMVPについて。わたしの中ではもうダントツである。広島の森保一監督。限られた予算の中で結果を出し続ける彼が、才能の宝庫で指揮を執ったらどうなるか。広島のファンには申し訳ないが、わたしは次のステップに進む彼がみたいし、でなければ、広島というチームが次のステップに進んでほしい、と強く思う。

 

<この原稿は15年12月31日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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