今年の独立リーグ日本一を決定する「日本独立リーグ・グランドチャンピオンシップ2011」が22日、開幕する。対戦するのは創設7年目で四国アイランドリーグplus初優勝を収めた徳島インディゴソックスと、BCリーグ初の連覇を果たした石川ミリオンスターズ。両者は今回が初顔合わせだが、今季の戦いには不思議と共通項がある。投手力を武器に前期シーズンを制し、後期は2位。リーグチャンピオンシップは初戦を落としてから3連勝で勝ち抜いた。このチャンピオンシップで徳島はアイランドリーグ勢の5連覇を、石川はBCリーグ勢では悲願の日本一を狙う。5回目を迎えた“もう1つの日本シリーズ”に臨む両チームの戦力を分析する。
徳島インディゴソックス
★今季成績
前期 22勝8敗2分 勝率.733(1位)
後期 18勝11敗3分 勝率.621(2位)
リーグチャンピオンシップ 3勝1敗(対香川)

 ポイントは1、2番の出塁

 低迷期が続いたチームが一気にリーグの強豪に躍り出たシーズンだった。
 2006年から09年まで4年連続で年間最下位に甘んじていた徳島インディゴソックスは今季、元広島の斉藤浩行監督の下、勝てる集団に進化を遂げた。前期は大川学史、石田大樹の両先発が計15勝をあげると、打線では主砲の元ロッテ・大谷龍次が8本塁打を放ち、他球団の追随を許さなかった。後期はあと1勝のところで前後期制覇を逃したものの、年間を通じて投打がかみ合い、戦いぶりは安定していた。その強さが際立ったのが後期優勝した香川とのリーグチャンピオンシップ。過去4度の年間王者を誇る相手に対し、初戦こそ落としたが、第2戦を勝ってタイにもちこむと、第3戦、第4戦はいずれも接戦をモノにした。

 接戦に強い理由は盤石のリリーフ陣にある。クローザーの富永一(鳴門高−アークバリアドリームクラブ)はMAX147キロの速球とスライダーのコンビネーションで打者を牛耳る。1年目の今季は30試合に登板して無敗。リーグトップの18セーブをあげた。
(写真:30イニングで54奪三振と高い三振奪取率も魅力)

 さらに、この富永につなぐセットアッパー役を務めるのが“ミスターゼロ”岩根成海(出雲西高−帝京大)だ。コンパクトなフォームから140キロを超えるストレートを投げ、36試合に投げて自責点はわずかに4。リーグ史上初の防御率0点台(0.68)をマークした。この「岩根−富永」による勝利の方程式は短期決戦でも威力を発揮するに違いない。

 先発は初戦の先発が予想される大川学史(関商工高−名城大−ヒタチエクスプレス)が軸になる。昨季12勝をあげて飛躍を遂げた右腕は、今季も15個の白星を積み重ね、最多勝に輝いた。181センチのスラリとした体から速球に変化球を投げわけ、安定感がある。石川・南和彰との最多勝対決は、このシリーズの行方を占う戦いになりそうだ。

 もちろん、地元紙で“青ヘル打線”と呼ばれる攻撃陣も侮れない。「あえてひとり今季のMVPをあげるとすれば4番の大谷」と斉藤監督も評価するのが主砲の大谷龍次(樟南高−日立製作所厚木−千葉ロッテ)だ。ロッテ時代は粗さが目立った打撃は今季、確実性がアップ。タイトル獲得はならなかったが、本塁打(11本)、打点(53点)はリーグ2位で長打力と勝負強さを兼ね備える。
(写真:13日のフェニックス・リーグ、楽天戦でもホームランを放った)

 その脇を固めるのはリーグ初年度から在籍する國信貴裕(山陽高−広島国際学院大−高知−福岡)と、チャンピオンシップでMVPに輝いた強打の捕手・山村裕也(八木学園高−大阪商業大)。6番はBCリーグでも活躍したベテランの根鈴雄次(新宿山吹高−法政大−エクスポズ傘下−米独立リーグ、メキシカンリーグなど−新潟−長崎セインツ)が座り、下位には8月まで打率4割を維持し、ヒットを量産していた松嶋亮太(浜田高−大分大)が控える。「打線の好調は“うれしい誤算”だった」と指揮官が明かすように、一度火がつくとその勢いは止められない。

 それだけに斉藤監督は「1、2番の出塁がポイント」とみている。ほぼ不動だった中軸以降と比べ、1、2番はシーズン中からさまざまな組み合わせを試したが、選手を固定できなかった。昨季、ベストナインに輝きながら今季は不調に終わった神谷厚毅(名鉄学園杜若高−名城大)、関口大志(常総学院高−東洋大(中退)−福岡)らがどこまで機能するかが注目だ。

 過去2度、グランドチャンピオンシップに出場している石川に対し、徳島は初めて。大舞台の経験値は相手が上だ。それでもアイランドリーグ勢の5連覇がかかっているだけに、斉藤監督も「記録を止めてはいけないプレッシャーがある」と明かす。リーグチャンピオンシップでも初戦は選手の動きが硬かった。ビジターでの開幕となる今回、いかに早く自分たちのペースで野球ができるかも重要になりそうだ。


石川ミリオンスターズ
★今季成績(北陸地区)
前期 14勝16敗6分 勝率.467(1位)
後期 15勝17敗4分 勝率.469(2位)
北陸チャンピオンシップ 2勝0敗(対福井)
リーグチャンピオンシップ 3勝1敗(対新潟)

 先発投手の出来がカギを握る

 石川ミリオンスターズは春先から主力投手の故障が相次ぎ、前半は自慢の投手陣が打ち込まれる試合が多かった。しかし、終盤の見事な巻き返しで最終戦での劇的な逆転優勝を達成。後期は2位に甘んじたが、北陸地区チャンピオンシップでは後期優勝の福井ミラクルエレファンツに連勝し、地区3連覇。続いて行なわれたリーグチャンピオンシップでは上信越地区覇者の新潟アルビレックスBCと対戦。ビジターでの初戦は自らのミスで失点し、打線も沈黙と完敗を喫したものの、第2戦から地力を見せ、怒涛の3連勝でリーグ史上初の連覇を果たした。

 連覇達成の最たる要因は、やはりエースの南和彰(神港学園高−福井工業大−巨人−カルガリーパイパース)の活躍だ。当初の構想では抑えだったが、投手陣に故障者が相次いだことでシーズン途中から先発に転向した南は、30試合に登板し、防御率は2.01。リーグ最多の12勝(5敗4セーブ)を挙げ、こちらもリーグ最多となる140奪三振をマークした。さらに特筆すべきは完投能力の高さだ。30試合のうち、完投した試合は11試合(うち完封2)にものぼる。「今季の南は、安心して見ていられる。昨季までは気持ちを抑えることができないこともあったが、今季はどっしり感がある。どの場面で投げさせても大丈夫」と指揮官からの信頼も厚い。
(写真:豪快なフォームから150キロ台の直球を繰り出すモタ)

 その南に次ぐ先発はモタ・ヘルナンデス(シカゴホワイトソックスアカデミー)と山下英(七尾工高−名古屋学院大)だ。特にモタは150キロ台の直球は威力十分。コントロールさえ定まれば、相手打線に長打を打たれることはない。新潟とのリーグチャンピオンシップ初戦では、自らの四球と守備のミスから失点し、リズムを崩した。だが、好調な新潟打線を手こずらせたこともまた事実で、本領発揮となれば、大きな戦力となることは間違いない。

 後ろには今季、先発から抑えに転向した佐藤広樹(安田学園高−徳島インディゴソックス−信濃グランセローズ)が控えている。それだけにモタと山下が終盤まで踏ん張れるか、また元エースで、今季復帰した蛇澤敦(北陸高−ルネス学園金沢専門学校)が佐藤につなぐセットアッパーの役割を果たすことができるかがカギとなる。

(写真:守備でも要の捕手としてチームの柱である深澤)
 打線は昨季以上のつながりとパワーがある。特にリーグ2位タイの11本塁打を放ち、チーム最多の45打点を叩き出した謝敷正吾(大阪桐蔭高−明治大)が好調だ。新潟とのチャンピオンシップでも勝負強さを見せ、4試合で14打数6安打7打点、打率4割2分9厘をマークした。
「誰かが当たり出すと、チームがそれに乗る」という森監督の言葉通り、今季の石川はうまくはまれば大量得点を奪う力がある。あとは4番でキャプテンの深澤季生(藤嶺藤沢−専修大)に本来の打力が戻れば、さらにチームは勢いづく。リードオフマンの戸田衛(南部高−阪南大)の足にも期待が寄せられる。

 石川はアイランドリーグとのグランドチャンピオンシップは3度目の挑戦だ。昨季は香川オリーブガイナーズに1勝3敗を喫した。だが、「決して力負けはしていなかった」と森監督が言うように、4本塁打を浴びた初戦を除けば、2点差以内と拮抗した試合展開での敗戦。BCリーグとアイランドリーグとの差が、確実に縮まっていることを証明した。今回こそは、リーグ初のグランドチャンピオンの座をつかみとり、独立リーグの新たな歴史に名を刻みたい。


<グランドチャンピオンシップ概要>

【試合日程】
★BCリーグラウンド
10月22日(土) 第1戦 石川−徳島 石川県立野球場 18時半
10月23日(日) 第2戦 石川−徳島 石川県立野球場 18時半
※雨天などで順延の場合、予備日程で実施(10月24日〜25日)。

★四国アイランドリーグPlusラウンド
10月29日(土) 第3戦 徳島−石川 JAバンク徳島スタジアム 17時
10月30日(日) 第4戦 徳島−石川  JAバンク徳島スタジアム 17時
10月31日(月) 第5戦 徳島−石川  JAバンク徳島スタジアム 17時
※雨天などで順延の場合、第5戦終了時で決着がつかない場合、予備日程で実施(11月1日〜3日 JAバンク徳島スタジアム 17時)

【チケット】
<BCLラウンド>大人:1,500円 小・中学生・未就学児:無料
<四国ILplusラウンド>大人:1,500円 小・中学生:600円 未就学児:無料

【ルール】
・3戦先勝したチームが優勝とする。
・全5戦を終了した時点でいずれかのチームの勝敗が3勝に満たない場合は、対戦成績で勝数の上回っているチームが優勝。対戦成績が同じ場合は、予備日にて追加で1試合を行ない、勝ったチームの優勝とする。
・雨天等により予備日を含む全ての日程を消化できなかった場合は、対戦成績で勝数の上回っているチームが優勝。対戦成績が同じ場合は両チーム優勝とする。
・9回裏を終了して同点の場合は延長戦を行う。延長戦は原則として決着がつくまで行う。ただし、球場使用時間制限等により引き分けとなる場合がある。