野球ではなくてサッカーの話題になりますが、昨年末のサンフレッチェ広島の活躍は見事だった。J1のセカンドステージ優勝を果たし、ガンバ大阪とのチャンピオンシップにも勝って、日本一達成。

 

 そのすぐ後に始まったFIFAクラブワールドカップでも3位入賞を果たした。準決勝のリバープレート戦が惜しかったですね。むしろ押し気味に見えたが、キーパーのミスを狙う相手の巧妙なフリーキックにやられてしまいました。勝っていたら、決勝でバルセルナとやれたのだけど。まあ、仕方ない。

 

 際立っていたのは、森保一監督の選手起用である。クラブワールドカップは初戦でケガ人がでたこともあって、実に大胆に若手を使い、またレギュラーでも休養を与える。途中で交代出場させた選手が、必ずといっていいほど活躍し、点を取る。

 

 選手の力量、状態を見抜く眼力、そして相手に応じたゲームプランがなければ、とてもじゃないが簡単にできる采配ではない。しかも、資金の潤沢なクラブではないから、スター選手をかき集めているわけでもない。

 

「成長しながら結果を出そう」が、森保監督の合言葉だったそうだ。つまり、育てながら勝つ、という方針である。これは、ラグビー日本代表の「ジャパンウェイ」にも匹敵する、美しい理念というべきだ。昨年はドウグラスや浅野拓磨を育てながら勝ったことは有名だけれども、たとえばヴァンフォーレ甲府から加入した佐々木翔も出ているうちにどんどん成長しているような気がしたし、茶島雄介なんて、クラブワールドカップの期間中だけでも成長したのではあるまいか。

 

 いやね、もちろん、わがカープのことを念頭に置きながら書いているのですよ。「育てながら勝つ」は、まさにカープが実践するべきテーゼではないか。

 

 予想された通り、前田健太のメジャーリーグ移籍が決まった。まずは15勝分の穴を埋めなくてはならない。

 

 昨年の今ごろは、黒田博樹の復帰も決まって、さあ、優勝じゃ、と大騒ぎしたものだ(かく言う私もその一人)。でも、今年は、知り合いのカープファンと話しても、どうにも意気が上がらない。

 

 しかし、森保監督のような戦い方をすれば、可能性はある、と言いたい。

 

 昨年のサンフレッチェの勝因の一つは、J1では結果の出ていなかったドウグラスが21得点の活躍をしたことである。この「育てる力」こそが監督の手腕である(そのドウグラスがさっそく移籍してしまったので、今季の森保監督がどんな手を打つか、今から楽しみだ)。

 

 今の投手陣に、黒田を除けば、15勝以上できるだけの潜在能力をもつ人材はいない、と考えるべきだろう(クリス・ジョンソンは二ケタ勝ってくれるだろうけれども)。だからこそ、そこが監督の腕の見せ所ではないか。見抜く力、起用する勇気。緒方孝市監督は、ぜひ森保ウェイを見習ってほしい。

 

 キャンプを見ないと何とも言えないが、もしかして、ドラ1岡田明丈に、その可能性はないだろうか?

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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