ボクシングのWBA世界ミニマム級タイトルマッチが24日、東京・後楽園ホールで行われ、同級4位で挑戦者の八重樫東(大橋)が、王者のポンサワン・ポープラムック(タイ)を10R2分38秒TKOで下し、世界王座を奪った。28歳の八重樫は2度目の挑戦でうれしいベルト奪取。ジムの大橋秀行会長が18年前に失ったタイトルを弟子が取り戻した。これで日本人男子の世界王者は最多タイの7人に増えた。
 4年分の思いを拳に込めた。10R、右のストレートが連続してヒット。ポンサワンがロープ際まで後退する。そこへ左フックからパンチの雨を降らせた。サンドバック状態になった王者を見て、レフェリーが試合を止めた。

 2007年6月、プロ7戦目で迎えた初の世界挑戦(WBCミニマム級タイトルマッチ)。当時の王者・イーグル京和に終始、圧倒された。アゴを骨折し、一時は再起不能とも言われた。だが、ターミネーターのごとく八重樫はよみがえった。大橋会長が「(4年前とは)別人」と評したように、挫折を乗り越え、再び世界のリングに立つ姿は強さを増していた。

 ムエタイを300戦経験したと言われ、ハードパンチを持つ王者と互角に打ち合った。スピードを活かした左ジャブから、相手が右を繰り出してきたところへカウンターの左フックがうまく入った。ポンサワンは表情ひとつ変えなかったが、ダメージの蓄積は大きかったはずだ。後半に入り、王者は明らかに疲労の色を隠せなくなっていく。

「チャンピオンはタフだった。試合が終わるまで怖かった」
 だが、タイ人ファイターの強打は死んでいなかった。8Rには八重樫の右アッパーでロープ際まで後退しながら、右ストレートで挑戦者をふらつかせる。
「思いっきりカウンターを食らって、倒れそうになった。もうダメだと思った」
 どちらかにクリーンヒットが入れば、いつ倒れてもおかしくない展開。ただ、ようやく巡ってきたチャンスを八重樫は逃すわけにはいかなかった。

 続く9R、ラウンド終盤で再び左をヒットさせて、王者をぐらつかせる。そしてベルトを射とめた10Rは、立ち上がりからボディ、アッパーと拳を次々と繰り出した。相手が消耗したところをフィニッシュにつなげた。

「6R、7Rから相手のペースになったので、ひっくり返すのは難しいと思っていた」
 そう大橋会長が振り返ったように、分が悪いとみられた打ち合いにも八重樫はひるまず、逆に打ち勝った。
「今日は打たれて疲れた。会長からディズニーランドに連れていっていただけると約束していた。ディズニーランドでゆっくりしたい」
 新境地を切り開いた新王者が、今後のリング上でどんな夢の世界をみせてくれるのか。期待を抱かせるには充分なタイトルマッチっだった。