キャッチャーはブロックが禁止され、ボールを持たずに走路を塞ぐと走塁妨害をとられる可能性が高い。一方でランナーも、走路からはずれた位置にいるキャッチャーへの体当たりは守備妨害をとられかねない――。今季から採用される新ルールの概要だ。

 

 ランナーとキャッチャーのどちらが有利か。言うまでもなくランナーだ。昨季までなら三塁でストップしていたケースでも、どんどん本塁を狙ってくるだろう。

 

 在京球団の守備走塁コーチは言う。

「足の速さはもちろん、スライディングの巧い選手が今季は重宝されるのではないか。キャッチャーが走路を空ければ、必然的に“追いタッチ”になる。外から回り込むようにスライディングすれば、キャッチャーは左に“半転”しなければならない。その分だけタッチが遅くなる。クロスプレーになればキャッチャーの不利は否めません」

 

 キャッチャー出身のバッテリーコーチは「このルールだとキャッチャーにできることは限られる」と言い、続ける。「大事なのは内外野のバックホームの送球の正確性。一塁側にそれれば、まずホームでアウトにすることは不可能でしょう。ベース上、もしくはやや三塁寄り。ここにピンポイントで投げてくれないとランナーは殺せませんね」

 

 新ルール採用の背景には安全重視の考え方がある。ブロックが禁止されることで「キャッチャーのケガは減る」との声がある一方で、「左手だけでタッチにいけば、逆に手首が危ない」との指摘もある。実際はどうなのか。こればかりはフタを開けてみなければわからない。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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