ドーハの歓喜。

 手倉森誠監督率いるU-23代表が1月、カタール・ドーハで開催されたリオデジャネイロ五輪アジア最終予選兼U-23アジア選手権を制し、アジア王者として五輪本大会に臨むこととなった。

 

 今回の最終予選は悲観的な見方が強かった。というのもU-22アジア選手権、アジア大会ともに準々決勝で敗退しており、そのうえ中東ドーハでの集中開催は環境面においても日本にとって有利とは言えなかったからだ。

 

 しかし、日本は見事に逆境を乗り越えた。グループリーグを3戦全勝で突破し、難敵のイラン、イラク、韓国を決勝トーナメントで破っての戴冠劇。いずれも厳しい戦いではあったにせよ、気力、体力、組織力で日本が他チームより上回っていたのは明らかだった。

 

 手倉森監督の“全員起用策”がズバリ当たった。

 フィールドプレーヤーをすべてピッチに送り込み、GK牲川歩見以外、23人中22人を使った。中2日、3日で試合をこなさなければならず、それが決勝まで進むとなると6試合を戦い抜かなければならない。メンバーを固定せずに調子のいい選手、勢いのある選手を使おうとしたことが結果的に吉と出た。MF中島翔哉、MF原川力、MF矢島慎也、そしてFW浅野拓磨ら10人がゴールを記録し、日替わりでヒーローも生まれた。記録を見ても、全員で勝ち取った優勝だったことが分かる。

 

 近年の日本代表を振り返ってみると、多くの選手を起用してうまくやりくりしながら戦った大会は結果がついてきている。

 たとえばアルベルト・ザッケローニ監督時代の2011年、アジアカップカタール大会。出場機会がなかったのはDF森脇良太、GK権田修一の2人のみ。DF伊野波雅彦、MF細貝萌、FW李忠成ら日替わりのヒーローが誕生して優勝をもぎ取ったのも、今回のケースと実によく似ている。

 

 逆に先発を固定したことで結果につながらなかったのが、昨年1月のアジアカップオーストラリア大会である。ハビエル・アギーレ監督はグループリーグから先発メンバーを固めていき、3連勝で首位突破を果たした。しかしそのままのメンバーで臨んだ準々決勝のUAE戦はPK戦にもつれこみ、敗れてしまった。

 

 日本が中2日に対し、UAEは中3日だった。南半球のオーストラリアは夏を迎えており、コンディション調整の難しさもあった。試合後、選手たちは疲労を口にしなかったものの、記者席から試合を眺めると全体的に体が重く感じた。

 

 グループリーグでは1点も奪われていないチームは、立ち上がりに集中力を欠いて失点し、追いつくまでに時間がかかった。試合全体で言えば日本が圧倒していたのは事実。だが勝ち切れなかったことも見逃せない事実。短期決戦における選手起用というものをあらためて考えさせられた大会でもあった。

 

 ハードワークが求められる現代のサッカーにおいて、全員で勝ち抜くというのは重要なキーワードになっているように思う。これは世界の流れでもある。先のブラジルW杯ではルイ・ファンハールが率いたオランダ代表は、メンバーやシステムを固定せず、登録23人全員を使って3位となっている。6、7試合を短期集中でこなしていかなければならない大会では、全員の総合力こそが勝負の分かれ目となってくる。

 

 リオ五輪本大会の登録メンバーは最終予選より5人少なく、18人となる。メダル獲得という目標に向かうには、全員の力が必要になってくるということ。

 誰かが伸びればいいということではない。全員が伸びていかなければ、リオ五輪本大会の躍進はない。


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