カープがまさかの2ランスクイズを成功させたのは2014年7月26日のことである。甲子園での阪神戦だ。

 

 5対5と同点の8回表、カープは1死二、三塁のチャンス。ここで2番の菊池涼介が一塁線にバントを転がすと三塁走者の赤松真人に続き、二塁走者の木村昇吾までが本塁を陥れた。

 

 木村はゴロを捕球した一塁手のマウロ・ゴメスが体勢を崩したのを見逃さなかった。ファーストのベースカバーに入った二塁手の上本博紀のバックホームは、わずかに右にそれ、梅野隆太郎捕手のタッチより一瞬速く、木村の左手が本塁を払った。

 

 この2ランスクイズがきいて、カープが7対5で勝利した。

 

 今季はこういうシーンが増えるのではないか。周知のように今季から導入された新ルールにより、クロスプレーの際、キャッチャーは本塁前でランナーをブロックすることができなくなった。ボールを持たずに走路を塞ぐことも禁止だ。

 

 一方でランナーも、走路からはずれた位置にいるキャッチャーへの体当たりは危険なプレーと見なされ、悪質な場合は守備妨害をとられる。

 

 機動力野球を得意とするカープに新ルールは追い風になりそうだ。ここ一番の場面では2ランスクイズが見られるかもしれない。そろそろ“赤いカーテン”の内側で非公開練習を始めてもいい頃かもしれない。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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