ガンバ大阪の新本拠「市立吹田サッカースタジアム」(4万人収容)の評判がすこぶるいい。

 こけら落としとなったプレシーズンマッチの名古屋グランパス戦、J1リーグ1stステージ開幕戦の鹿島アントラーズ戦といずれも観衆は3万人を超えた(名古屋戦3万5271人、鹿島戦3万2463人)。1995年から去年までG大阪の1試合平均観客数は2万人に届いていないだけに、上々の数字と言える。

 

 売りは何と言っても観客目線となっている“つくり”だ。距離はスタンドからタッチラインまで7m、ゴールラインまで10mとイングランド・プレミアリーグばりの近さで試合観戦を楽しめる。それも観客席の最前列からはピッチまでの高低差が150cmしかなく、プレイヤーの目線とほぼ同じ高さだ。

 

 すり鉢状の客席は見やすい角度に設定され、大きなビジョンも設置している。座席部分は雨で濡れないように屋根で覆われており、フリーWi-Fiの通信環境、場内を1周できるコンコースと観戦者にいろいろと配慮されている。筆者も昨年10月の竣工式が終わってから実際にスタジアムを視察させてもらったが、足を踏み入れただけで興奮を覚え、思わず「うわーっ」と声を挙げてしまったほどだ。

 

 この市立吹田サッカースタジアム、実は今後、日本代表とも関わってくる。最大収容人数などFIFA基準を満たしており、国際Aマッチの開催も可能だ。早速、6月7日に行なわれるキリンカップ決勝・3位決定戦の舞台となる。

 

 日本代表はこれまでW杯アジア地区予選のホーム会場となると、埼玉スタジアム2002をメーンに使用してきた。

 埼スタでのアジア予選はこれまで16戦して13勝3分けで無敗。元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニも「埼スタの雰囲気が好きだ」とよく話していた。

「ファン、サポーターのみなさんがいつもスタンドを埋め尽くしてくれて、我々を後押ししてくれる。みなさんの期待が高ければ高いほど、選手たちはその思いをプレーで反映しようとする、必死で応えようとする」

 

 単に“ゲンのいい場所”ということではない。

 横浜国際競技場(日産スタジアム)、ヤンマースタジアム長居(大阪長居スタジアム)などは陸上トラックがあるが、埼スタはサッカー専用スタジアムだ。トラックがなく、ピッチとスタンドが近いために、ホームの雰囲気をよりつくりやすい。選手がファン、サポーターから「後押し」されている実感を得られやすいということが、これまでの不敗伝説をつくり上げていると言える。

 

 ロシアW杯アジア地区予選のホーム戦すべてが埼スタになる可能性もあるようだ。だが、近い将来、埼スタと同じ雰囲気をつくることのできる“吹スタ”を早速キリンカップで使用するということは、今後に向けたテストの意味合いもあるように思う。キリンカップで優勝でもすれば、「雰囲気」「ゲン担ぎ」の両面で、新たな“聖地”となる可能性もあるのではないだろうか。

 

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も埼スタはお気に入り。引き分けに終わった15年6月のシンガポール戦後、「ファン、サポーターのみなさんは凄くいい雰囲気をつくってくれたのに得点を奪えなかった。だから応援してくれた方々に対して謝りたい」と語っている。

 

 サッカー専用スタジアムだからこその雰囲気。

 埼スタのアジア予選を振り返ると、ジーコジャパンでのオマーン戦(3次予選、04年2月)で久保竜彦が、北朝鮮戦(最終予選、05年2月)で大黒将志がロスタイムでの劇的な決勝ゴールを奪っている。近年でも11年9月、3次予選の初戦で北朝鮮と対戦し、スコアレスで進みながらもロスタイムに吉田麻也がゴールを奪ったシーンが思い出される。

 

 西の日本代表ファン、サポーターも熱くなれるスタジアム。

 吹田スタジアムが“西の聖地”となれば、新たなドラマが生み出されていくに違いない。


◎バックナンバーはこちらから